EC物流がネックに!運送屋さんが送料大幅値上げで大ピンチ!!

  • 先行運営されているECオーナーは、どのような過程を経てサイトを立ち上げたのか?
  • 運営開始にあたって、どんなことでつまずいたのか?

ライター業を営む傍ら、自身でECの運営代行やwebサイトのディレクションも行う筆者。そんな筆者が、実際業務にかかわったECサイトの構築過程や、課題・売上目標を達成していく様を赤裸々にご紹介する体験談。

継続的にECサイトを成長させていくためには、配送コストは避けて通れない課題です。今回の記事では、運送業者の送料値上げに直面した我々のエピソードを通じて、配送コストの問題に対しEC運営者はどう考え・立ち向かうべきなのか?をお伝えしたいと思います。

しばやん

この記事が、他のECサイト運営者の送料値上げ対策や、サイト運営のためのヒントになれば幸いです。

拡大するEC市場とそれに追いつかない配送体制

コロナ禍の影響で巣籠もり需要が増え、昨今ますますECサイトに対する需要は増えています。先日、経済産業省が発表した2020年のEC市場規模(BtoC版)はおよそ19.3兆円。旅行予約やチケット販売などサービス系ECの市場が縮小したため前年比0.4%減となりましたが、物販ECは前年比21%増の12.2兆円となっています。

このように市場や需要が広がる一方、ECサイトで売れた商品の運び手不足問題が深刻な社会問題となって来ています。EC利用の拡大と配送サービスの拡充のバランスが崩れてしまえば、ロジスティクス(物流)の問題がネックとなり、市場需要を補うことができなくなるかもしれません。

しばやん

つまり配送を担っておられる企業やスタッフの負担が増えれば、『翌日配送』を始め、これまで当然のように行っていた便利な輸送サービスが受けられなくなってしまうのです。

配送業者の一斉値上げで大打撃を受ける

EC需要の拡大とそれに伴うスタッフ不足を解消するため、2019年の秋、ヤマト運輸・佐川急便・日本郵便の大手3社をはじめ、名だたる配送業者が総じて送料の値上げを実施。これにより、我々が運営する木材通販サイトは大打撃を受けました。

木材を取り扱うECは、商品が売れれば必ず長尺の木材をお客さま宅に配送しなければなりません。長尺物や重量物の運賃は割高なこともあり、配送費の値上げを自社ですべて賄いきるのは不可能です。

今まで紆余曲折ありつつも、なんとか業績を伸ばしてきたECサイト。しかしこの送料の値上げは、過去の課題とは違い社会インフラ的な問題。今回ばかりは、本当に困りました…。

配送コストの高騰は全てのEC業者にとって最大の課題

配送コストの問題は、我々のサイトだけが抱える課題ではありません。EC物流代行システムLOGILESSの調査によりますと、EC業務における課題について、56%が「送料含む配送コストの課題を抱えていると回答。配送コストの課題が占める割合は、全体の過半数に達していることから、EC業務の最大の課題といえるでしょう。

順調だったサイト運営が配送コストの高騰で赤字に

ご紹介している木材通販サイトは、売上向上やユーザー獲得のために、モバイルファースト化、サイト内商品検索システムを含むUI・UX対策、売上向上のための広告運用開始などの施策を行ってきました。

その甲斐あって、木材通販サイトの2019年度売上高は、前期比30%増の約9,000万円と増収を記録。一方で物流コストの増加などに伴い、2019年9月~2020年3月半期の営業損益はマイナス約100万円と、赤字を計上してしまったのです。

赤字の要因は単に配送コストが上昇しただけでなく、物流ネットワークがうまく稼働しなくなったことによる、機会損失も収益悪化の要因だと考えられます。

具体的には、運送業者による運賃の値上げで、取引1件当たりの配送コストが上昇したこと。契約していた運送会社が大型商材の取り扱いを中止したため、急遽代替業者を探したが、配送コストが割高だったということが判明しました。

配送コスト増に負けないための取り組み

しばやん

今回ご紹介している、配送コスト高騰など外的要因による問題は、自社・自店だけの努力では根本的な解決は図れません。

自分たちの努力が報われないという事態は、著しくモチベーションが下がります。特に我々のサイトは、構築したECサイトやシステム・広告運営もようやくうまく機能し始めた矢先だったので、関係者一同の落胆はひとしおでした。

けれど、なぜ?どうして?と嘆いていても、解決の糸口は見つかりません。かといって、配送コストが増加した分をそのまま商品価格に上乗せすれば、顧客離れが起こるのは明らかです。

荷造配送費率を下げる見直しを開始

そこで「荷造配送費率」を下げることができないか、今一度、業務フローを洗いなおしてみることにしました。ちなみに「荷造配送費」とは、商品や製品の荷造と発送にかかる費用などを処理する経理上の勘定科目のことを言います。

木材通販サイトでは物流行程が、「仕入れ」「保管」「加工」「荷造」「発送」の4つに分類されます。業務フローの見直しに際しては、私たち運営サポートチームも木材保管庫や加工場に足を運び、一から業務の在り方を再検討するお手伝いをしました。

具体的な対策

しばやん
実際に物流の現場を見て聞いて、導き出した対応策は以下の4項目です。
■商品保管費の削減を目指す
・倉庫での管理システムの導入を検討
・余剰在庫を減らすため在庫量の適正化を図る
■商品保管効率向上のため保管状況を再検討
・複数の倉庫間で商品移動が発生しないように商品配置を見直す
・倉庫内における商品保管の適正配置を検討
■商品梱包サイズの抜本的な見直し
・梱包材の原価率を引き下げる
・梱包形状を可能な限りコンパクトにすることで配送料自体を削減する
■商品仕入れ先の再選択と集中化
・取り扱い商品構成の見直しを図る
・利益率の高い新商品および新ジャンルの選定

関係者が知恵を絞って出した施策で得られる経費削減や増益で、配送コストの高騰分を幾分賄うことが出来る算段が付きました。このように配送コストが高騰して生じた減益を、配送料の値上げと社内の施策によってカバーしていく事は決まりました。

しかし配送料の値上げがすんなり実行できた訳ではありません。現場のスタッフからは配送コストの高騰分を、若干でもお客さまからいただくことに反対の声が上り、値上げ自体を行うか否か?の議論も巻き起ったのです。

他社の「やせ我慢」に付き合わず「購入者からのクレーム」に屈しない

彼らの言い分は、「業務の見直しは良いが、配送料の値上げは反対!もしくは時期尚早だ!」というもの。実際にお客さまと接している、彼等の気持ちは理解できます。だれしもクレームは受けたくない。それに我々が配送料金の改訂を行う時点では、同業他社が未だ送料値上げに踏み切ってはいませんでした。

ただこれ以上は、本来お客さまからいただくはずの配送料の差額を、自社でカバーする訳にはいきません。そこで私は、現場スタッフに次のように説得して回りました。

「確かに、同業他社の動向に気を配ることは大切です。けれどいつまでも、やせ我慢に付き合う必要はありません。どのショップもいずれ必ず配送料の値上げは行わなければならないのです。それよりも早く、仕入れ・保管・加工・梱包といった各工程の見直しと合理化を図りましょう」

「すべての顧客から、配送料金の値上げに対する理解を得ることはできません。顧客は、ある意味わがままな存在です。離れる顧客よりも、残った顧客のフォローを考えましょう。より付加価値の高いサービスを生み出して、リピート率を上げる施策を実行するのです」

最初は値上げを渋っていたスタッフの方々も、説得を続けるうちに、こちらの意図を理解してくださいました。

配送料の値上げに対する我々が考えた苦肉の策

しばやん
配送コスト高騰を受けて以上のような対応策を講じたのですが、我々サポートチームは、問題の根幹である配送料自体の設定にも手を入れなければならないと考えました。

例え施策との差額であっても、配送コストの高騰分を単に「値上げ」というかたちで価格へ反映させるだけでは、あまりにも芸がありません。どうせ配送料の見直しを行うのであれば、顧客の購入行動を分析し、より効果的な配送料金のつけ方がないか模索してみることにしたのです。

実際にホームセンターから軽トラで木材を運んでみる

このサイトの主力商品は木材。この木材を、「輸送」という観点で今一度分析してみました。それも単にデータ分析するだけでなく、実際ホームセンターで木材をサイトの平均購買価格分だけ購入。軽トラックを借りて、木材を自分達の手で運んでみたりもしたのです。

これが結構大変…。

1本の木材を運ぶだけでも大変なのに、サイトで購入される平均的な分量となると数十キロ~100キロ近い重量です。複数の木材を運ぶのは、かなりの手間と体力が必要でした。

しばやん
購入データを仔細に見ると、マンションなど集合住宅の方・女性もしくは世帯による購入が多いことが判明。

購入量に関わらず送料を一律化してみたらどうか?

木材系のDIYを始める女性も増えてきていますが、やはり木材の運搬は大変なはず。ましてやマンションの自室に持ち帰るとなるとかなりの労力です。

そこで「自宅まで配送してくれるのであれば、送料はある程度かかっても納得してくれるはず」という仮説を立て、それまで商品や木材の重量で変えていた(無料も含む)送料を一律、1,000円前後で統一。

つまりお客さまは、重い木材をいくら買っても、送料は一律1,000円前後で済む訳です。それでも賄えない配送コストの差額は、一部の商品の値上げという形で代替してみました。

この施策は、ウケました。配送料金改定後は、売り上げもV字回復を見せています。

ECが直面するその他のロジスティクスの課題

ECのロジスティクス(物流)という問題に目を向けると、配送コストの高騰以外にも、担当者だけが業務のやり方を把握している状態の「属人化現象」や、「複数サイト運営に伴う受注業務の煩雑化」なども課題として上げられるでしょう。

中には「ECはデジタル化された店舗だから、マンパワーは必要ない」と発言する方もいらっしゃるようですが、私に言わせるとむしろその逆。

リアル店舗は、支払い後に商品を渡せば顧客対応が終了しますが、ECはそうはいきません。

発注後も、購入者に商品配送の伝票番号やサンクスメールを送るなど、リアル店舗にはない様々な対応が控えています。商品がお客さまの手元に届くまでの工程を考えると、ECサイトのマンパワー不足は深刻な問題だといえるでしょう。

我々のクライアントは、業務兼任と効率化でこれらの問題を解決してきましたが、個人店や小規模事業者の方々、他部署からの応援が得られない業態の方であれば、配送代行という選択肢も問題解決の糸口になるかもしれません。

まとめ

今回はEC需要拡大も絡んだ配送コストの値上げと、その対策についてお話ししました。この問題は、いわば社会問題を背景としたコスト増といえるかもしれません。類似した問題に、消費増税・原材料高騰などが上げられます。

このような問題が生じた時に 最も気を付けたいのが、安直な便乗値上げや競合のやせ我慢施策への調和です。自己解決できない無力感からくる「虚しさ ⇒ 嘆き ⇒ 思考停止」という負の連鎖を避けるように意識しましょう。

打撃を受けるのは、競合も同じです。社会変革が起きたタイミングは、自社の物流や価格設定を見直すチャンスかもしれません。まずは自社・自店の物流や業務フローを見直しましょう。改善や飛躍のヒントが見つかるかもしれませんよ。

ABOUTこの記事をかいた人

自らもEC業界を学びつつ、みな様のお役に立てれば!と 日々奮闘する中の人です。
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