ECモールで成功した「小島屋」が“脱モール依存”を決断し、自社ECでも売上拡大できた理由
- 2021.01.132024.01.30
「本店(自社EC)で売り上げを伸ばす方法を知り、施策を自分で考えられるようになると、本店の仕事はどんどん楽しくなっていく」
こう話すのは、ドライフルーツやナッツなどを東京・アメ横の実店舗とECで販売している「小島屋」の三代目店主、小島靖久さん。
2004年に楽天市場へ出店してEC事業を開始し、モールECで成功を収めた「小島屋」は2014年、将来を見据えて自社ECサイトの強化に乗り出しました。
2014年当時は自社ECの売上比率が約1%にとどまっていましたが、2回のリニューアルを経て2020年11月時点で自社EC比率は25%以上に拡大。
将来的に自社EC比率60%を目指して挑戦を続けています。
ECモールで成功した「小島屋」が自社ECサイトにも注力するのはなぜか。そして、自社ECの売り上げを伸ばすために取り組んできた施策とは。
2020年11月に株式会社フューチャーショップが開催したオンラインセミナー「SHIFT future vol.2」では、「小島屋」の小島靖久氏と、同社を支援しているECコンサルタントの山本頼和氏をお迎えし、「小島屋」がモール依存からの脱却を決断した理由や、自社ECサイトのリニューアルで実施したこと、そして、売り上げを伸ばすために取り組んできた施策とその成果を語っていただきました。
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創業60年、東京・上野のアメ横で実店舗を運営している「小島屋」。ドライフルーツ・ナッツ・健康美容食品・お煎餅・おつまみ・スルメ・貝柱などを販売している。
「小島屋」の自社ECサイト(スマートフォンサイト)。
2010年にオープンし、2014年11月に1度目のリニューアル、2020年6月に2度目のリニューアルを実施した。現在は「futureshop」のCMS「commerce creator」で構築・運用している。
目次
1度目のリニューアル。モールが好調な時期に自社ECへの投資を決めた理由とは?
小島屋は1956年に創業し、東京・上野のアメ横で実店舗を運営しています。ECを始めたのは2004年のこと。新たな販路を開拓するため、楽天市場に出店しました。
「アメ横の人通りが以前と比べて減っていたこともあり、ECを始めてみようと思った」と当時を振り返る小島さん。「背水の陣で臨んだ」という楽天市場店の売り上げは、モール自体の流通額の拡大と相まって順調に伸びていきました。
2010年ごろには楽天市場店の月商が約3000万円に拡大。2014年には楽天ショップ・オブ・ザ・イヤーの「スイーツ」部門を受賞するなど大成功を収めました。
楽天市場の流通額は年々拡大し、モールで商売することに不安はまったくありませんでした。集客におけるセールやポイント還元の依存度は現在よりも低く、エンドユーザーに喜ばれる企画を行えば反響も大きかった。お客さまと一緒に楽しんでいる感覚があり、楽天市場が掲げる「shopping is entertainment」を実感していました(小島さん)
2014年に自社ECをリニューアル
楽天市場での売り上げが好調だった2014年初旬、小島さんは自社ECサイトの強化に乗り出しました。「小島屋」の自社ECサイトは2010年ごろから運営していましたが、運営に力を入れていなかったため月商は数十万円規模。自社ECの売り上げはEC事業全体の1%程度にとどまっていたそうです。
当時は楽天市場店のデザインやコンテンツを、ほぼそのまま自社ECサイトに転用していましたし、自社ECの広告運用やCRMなどの施策は、ほぼ何もしていない状態でした(小島さん)
自社ECサイトのリニューアルを想定して予算を計上し、外部のコンサルタントと契約。ECサイトの構造や動線、コンテンツなどを抜本的に見直した上で、2014年11月に自社ECサイトをリニューアルオープンしました。その結果、自社ECの月商はリニューアル前と比べて5~6倍に伸びるなど、成果を上げたそうです。
投資効果が積み上がる自社ECを重視
ECモールの売り上げが好調だったにもかかわらず、自社ECの運営を強化した理由の1つとして、小島さんは「ECモールの出店者を取り巻く環境が変化していた」ことを挙げました。
2010年代に入ると、ECモールのなかでライバルが増え、価格競争が激化しました。セールやポイント還元を行わないとお客さまが集まらない。楽天市場に限らず、多くのECモールで安売り競争が加速した時期だと思います (小島さん)
仕入れ商品を販売している「小島屋」は、ECモールにおける価格競争に巻き込まれました。それに追い打ちをかけるように、ECモールの検索アルゴリズムが変わるたびに投資を強いられる状況にも苦慮していたそうです。
ECモールでは短期的に売れている商品がモール内で目立ちやすく、より売れる傾向にあります。そのため、売り上げを維持するには広告投資を止めることが難しい。また、検索ロジックなどアンコントローラブル(管理不能)な要素が多く、投資がフローになってしまう。将来に向けて投資するなら、コントローラブル(管理可能)な要素が多く、投資がストックになる自社ECにも力を入れる必要があると判断しました(小島さん)
自社ECの売り上げは伸びたが、売れている理由が分かないから不安だった
自社ECをリニューアルしたことで売上高は伸びたにもかかわらず、小島さんは漠然とした不安を抱えていました。
なぜなら、自社ECサイトの売り上げが伸びた理由を、小島さん自身が十分に理解できていなかったから。
「小島屋」は少人数で実店舗とEC事業を運営していたこともあり、自社ECサイトのアクセス分析や広告運用などはコンサルティング会社にほぼ丸投げの状態。SEOやリスティング広告の運用も委託していたため、売り上げが伸びても「なぜ売れているのか」が分からなかったそうです。
コンサルティング会社が実施していた施策の内容はもちろん把握していましたが、その施策を行う理由を理解できていませんでした。
売り上げが伸びた理由が分からないから、成功パターンを自分では再現できないし、売り上げが落ちたときの対策を見つけることもできません。例えばGoogleの検索アルゴリズムが変わったら、売り上げが落ちないように祈るしかないわけです(小島さん)
こうした状況に危機感を持った小島さんは、自社ECのノウハウを身に付けるため、自社ECサイトを自分たちで運営することを決断。2017年からは本格的に自社運営に切り替えました。
セミナーに参加して自社の欠点に気づき、2度目のリニューアルを決意
自社ECサイトの運営を自分たちで行うようになった「小島屋」は2019年秋、2度目のリニューアルに着手しました。
そのきっかけは、futureshopが開催している店舗さま向けの勉強会「futureshop ACADEMY
(フューチャーショップアカデミー)」を2019年6月に受講してくださったこと。
自社ECの戦略立案をテーマとした講座(失敗しない自社ECサイトの展開戦略。受注計画と売上分析)や、サイトのアクセス分析をテーマとした講座(Googleアナリティクスでの現状分析。ゴール・KPI(判断基準)設定)を受講し、「小島屋」の自社ECサイトに足りないものに気付いたそうです。
futureshop ACADEMYで教わったことの1つは、数字を分析することの重要性です。当時の私は、自社ECの数字を把握していたつもりでしたが、細かい指標まで追えていなかった。futureshop ACADEMYに参加したことをきっかけに、自社ECの数字をあらためて分析したところ、リピート率が私の想像よりも大幅に低いなど、さまざまな課題が見えてきました(小島さん)
小島さんが受講したセミナーで講師を務めたのは、futureshop ACADEMYの講師の1人である株式会社二天紀の山本頼和さんでした。
セミナーをきっかけに小島さんと山本さんの交流がはじまり、小島さんが自社ECサイトの運営方法について山本さんに相談したことから、リニューアルのプロジェクトが動き出しました。
リニューアルのKPIはスマホサイトにフォーカスした「CV件数」や「会員登録率」
「小島屋」の自社ECサイトのリニューアルが具体的に動き始めたのは2019年11月。最初に取り組んだのは、「小島屋」が描く自社ECの未来像を整理することでした。
将来的に実現したい壮大なゴールを描き、それを達成するために必要なことをリストアップしていきました。そして、自社ECサイトで行いたいサービスや、実現したいことを整理し、機能要件やデザインなどに落とし込みました(小島さん)
「小島屋」の自社ECサイトのビジョンが定まったら、次に行ったのは自社ECサイトの各種指標の分析でした。
Googleアナリティクスなどを使ってページごとのセッション数や、離脱率や収益への貢献度などを分析し、サイトの強みや弱点を特定。商品軸での売上分析、顧客データの分析、商品・カテゴリマスタの整備なども行ってリニューアルの方向性を固めていきました。
リニューアルに着手する前にサイト分析を行うことの重要性について、山本さんは次のように強調しました。
Googleアナリティクスなどでサイトを分析すると、ページ別訪問数が多いページや離脱が多いページなどが見えてきます。「小島屋」さんの場合、動線を改善すればコンバージョンは増えると感じたので、まずはコンバージョンから逆算したKPIを設計しました(山本さん)
サイト構築はfutureshopのパートナーに依頼
今回のリニューアルでサイト構築を担当したのは、株式会社フューチャーショップのパートナー企業である株式会社デザインファミリーさん。
「小島屋」の自社ECサイトはfutureshopのCMS「commerce creator」で構築しているため、「commerce creator」で多数の構築実績があり、SEOのプロフェッショナルでもあるデザインファミリーさんを選んだそうです。
そしてリニューアルのプロジェクト開始から約半年後の2020年6月、「小島屋」の自社ECサイトがリニューアルオープンしました。
なお、futureshopでは店舗さまからサイト制作などのご相談をいただいた際、店舗さまの要望に合わせてパートナー企業を紹介しています。
パートナー企業はサイト構築、コンサルティング、運営代行、広告運用、ささげ、コンテンツ制作などの業務をカバーしており、店舗さまの業務をサポートしています。
リニューアルで行った施策と、その成果
2020年6月のリニューアルでは、ユーザーに対するアプローチを
- 集客フェーズ
- 購入前の接客フェーズ
- 購入後の接客フェーズ
上記の3つに分類してリニューアルの方向性を整理しました。
集客フェーズ
SEOや広告、ソーシャルなどの施策を強化し、サイトの集客数を増やす。
購入前接客フェーズ
ユーザーがサイトに訪問してから購入完了に至るまでの動線を明らかにし、ユーザーがよりストレスなく買い物ができるお店を作る。
購入後接客フェーズ
会員登録の促進、メルマガ登録の促進、LINE連携も検討。
リニューアル後のECサイトで実施する施策は、「新規受注件数強化」「会員獲得強化」「リピート受注件数強化」といった目的に合わせて立案。
さらに「新規受注件数強化」において「集客強化」「動線強化」「CV強化とCVR強化」といった具合に施策の目的を細分化し、ゴールを明確にしていきました。
施策の目的やゴールを具体的に定めることで、それぞれの施策の効果を検証できるようになり、施策の改善案も出しやすくなります(山本さん)
リニューアルでCVRは1~2ポイント改善、会員獲得率も改善
「小島屋」の自社ECサイトのCVRはリニューアルによって劇的に改善しました。
2020年10月度のスマホサイトのCVRは2.69%で、前年同月比1.07ポイント改善。PC・タブレットのCVRは6.79%となり、なんと前年同月比2.11ポイントも改善しました。
自社ECサイトのCV数の最大化を目指してリニューアルを実施した結果、CV数が増え、ECサイト全体のCVRも上昇しました。特に初回訪問のCVRが大幅に上昇しています。新規ユーザーでも買いやすいサイトになったということです(山本さん)
「会員獲得率」や「メルマガ獲得率」も上昇し、会員獲得率はリニューアル前の62%から直近80%に上昇、メルマガ獲得率は47%から65%へ上昇しました。
メルマガ会員が増え、ECサイトのCVRが改善したことで、メルマガ経由の売り上げも伸びています(小島さん)
山本さんは「小島屋」が取り組んできた施策を説明するなかで、CVRが劇的に改善した理由を知るには、「小島屋」のECサイトで実際に購入してみることが最善だと指摘しました。
他社のECサイトを調査するには、実際に商品を購入するのがもっとも効果的です。商品ページを閲覧しただけで理解したつもりになる人も多いですが、店舗の取り組みを知るには、決済完了画面まで進むことが必要です(山本さん)
リニューアル後に取り組んでいる「新規獲得」と「リピート促進」の施策
2020年11月現在、「小島屋」の自社ECサイトでは新規顧客の集客を強化しています。新規顧客の集客は「認知獲得」と「コンバージョン」の両面で、SEOや広告、コンテンツマーケティングなどの施策を使い分けているそうです。
メルマガを活用した「商品の提案」にも力を入れています。小島さんは、以前は自社ECのメルマガにあまり力を入れていなかったそうですが、現在は、季節ごとのオススメ商品を案内するなど積極的にメルマガを活用しています。
しかも、初回購入者には次回の購入(リピート)につながりやすい商品をメルマガで案内するなど、売りたい商品を提案できるようになったそうです。
以前は漠然と販促施策を打っていましたが、今は明確な意図を持って施策を実行できるようになりました。お店としてオススメしたい商品を、能動的にお客さまに提案できている感覚があります(小島さん)
意図を持って販促施策を打てるようになった小島さんは、仕事に対するモチベーションも上がっているようです。
2020年6月に自社ECサイトをリニューアルしてから、小島さんの笑顔が増えたように感じます。自社ECの仕事に前のめりになっているんじゃないですか?(山本さん)
山本さんのこの質問に対して小島さんは、「施策の意味や目的が分かってきたので、仕事が楽しくなった」と応じました。
施策の意味や目的が分かるようになってきたので、自社ECの仕事が楽しくなってきたんですよ。以前は、メルマガが大事だと言われたら、とりあえず「頑張ります」と答えていましたが、なぜ大事なのかよく分かっていなかった。でも今は、メルマガが重要な理由を理解しているし、何をすれば効果が出るか分かってきたので、モチベーションが以前とは違います(小島さん)
自社ECへの投資は積み上がっていくから、将来を見据えて投資する価値がある
セミナーの最後、司会を務めた稲生から小島さんに「ECモールと自社ECの位置付けや、使い分けについてどう考えていますか」と質問しました。
この質問に対して小島さんは、「自社ECとECモールの、どちらも頑張るべき」と答えました。
自社ECで売りやすい商品がある一方で、ECモールで売りやすい商品もあります。また、特定のECモールでしか買わない消費者もいるでしょう。だから、自社ECもECモールも、どちらも頑張るべきだと思います(小島さん)
同時に小島さんは、自社ECへの投資はストック(資産)として積み上がっていくため、将来を見据えてこれからも注力したいと語りました。
自社ECへの投資はストックとして積み上がっていきます。将来への投資として自社ECを強化することは必要だと思います(小島さん)
自社ECサイトは打てる手がたくさんあります。でも、「ウルトラC」の施策を行う必要はないんです。地味なことを積み重ねていけば成果は出る。そのことに気付くと、本店の仕事が楽しくなると思いますよ(小島さん)
まとめ
2020年はコロナ禍でEC市場に追い風が吹き、ECの売り上げを大きく伸ばした事業者さまも少なくありませんでした。一方で、「売れている理由がよく分からない」「ECの好調がいつまで続くか分からない」といった不安を抱えている経営者さまもいるのではないでしょうか。
今回のセミナーに登壇した小島さんは、自社ECの仕組みを学ぶことで、意図的に施策を打てるようになったとおっしゃっていました。
自社ECサイトを運営していると、Googleの検索アルゴリズムが変わるなど、外部環境の影響を受けることもあります。でも、自社ECについて正しく学び、環境の変化にしっかり対応している店舗さまはたくさんいらっしゃいます。
自社ECは初期投資がECモールより大きくなることが多いため、躊躇するEC事業者さまもいるかもしれません。
でも、小島さんもおっしゃったように、自社ECへの投資は「ストック」として積み重なっていきます。そして何より、自社ECサイトは接客の自由度が高く、お客さまと丁寧に向き合うCRMも実現できるため、店舗運営を楽しむことができるはずです。
自社ECについて正しく学び、仕事を楽しむこと。
先行きが不透明な時代でも商売を続けていくには、こうした心構えを持つことが大切だと実感するセミナーでした。
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「何をやればいいのかわからない…」から、「何をやればいいのかわかった!」へ EC担当者様を導く
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株式会社小島屋様 / ドライフルーツとナッツの専門店 上野アメ横 小島屋
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