BtoBサイトで年商1億円超「卒塔婆屋さん」が取り組むコンテンツSEOとページ改善の極意
- 2024.07.102024.07.19
地味で手間がかかる作業だとしても、買いやすいショップにするために、コンテンツ作りやページ改善を徹底的にやり抜く。ECの売上を伸ばし続けるには、それしかないというのが持論です
そう話すのは、墓石の後ろに並べて立てる木製の札「卒塔婆(そとうば)」を製造している有限会社谷治新太郎商店の谷治大典社長です。
1882年創業の同社は2013年8月、従来から取り組んできた対面の営業手法に限界を感じ、卒塔婆専門のBtoBサイト「卒塔婆屋さん」を開設しました。ECサイトに卸売り価格を明示し、1本単位で買えるようにするなど、業界の常識をくつがえす手法で販路を拡大。顧客である寺院や神社のニーズを掘り起こすことに成功した結果、取引先の口座数はEC開始前の8倍以上となる約5000社まで増えました。「卒塔婆屋さん」の年商は1億円を突破しています。
市場規模がゆるやかに縮小していると言われる卒塔婆業界において、ECを活用することで、会社全体の売上高を伸ばし続けている谷治新太郎商店。その成長の裏には、社長自らがECサイトのコンテンツを作り、アクセスデータを毎日チェックしてページの改善を行うなど、UI/UXを徹底的に磨き抜くトップの姿勢がありました。
谷治大典社長へのインタビューを通じて、「卒塔婆屋さん」が売上を伸ばすために取り組んできた施策を詳しくお伝えします。また、同社が2023年5月にECプラットフォームをfutureshopにリプレイスした経緯や、futureshopを使って売れるBtoBサイトを実現した方法も紹介しています。BtoB-ECを強化したい事業者さまは「卒塔婆屋さん」の成功事例をぜひ参考にしてください。
【このインタビューを読むと次のことがわかります】
- 【集客】コンテンツSEOでオーガニック流入を増やす方法
- 【CVR】コンバージョン率を上げるページ改善の方法
- 【単価UP】価格競争から脱却するためのサービス
- 【リピート】F2転換率を上げる「マイページ」の活用法
- 【システム】futureshopで売れるBtoBサイトを作る方法
目次
- 1 創業142年の卒塔婆メーカーがBtoBサイト「卒塔婆屋さん」を作った理由
- 2 業界の常識を覆すEC戦略でシェア拡大。取引先は10年で8倍の5000社に
- 3 コンテンツSEOでオーガニック流入数は月間10万PV
- 4 オーガニック流入が増えてEC売上高が倍増した成功事例
- 5 ブログの直帰率が70%から30%に下がった動線改善の方法
- 6 動線設計はシンプルに「使い慣れたUI」を重視
- 7 アクセスデータを毎朝チェックして買い物動線を改善
- 8 BtoBサイトのプラットフォームにfutureshopを選んだ理由
- 9 売れるBtoBサイトを作るために活用しているfutureshopの機能
- 10 卸事業のデジタル化でキャッシュフローが改善
- 11 脱・価格競争に成功した独自のサービスとは?
- 12 ECを軸に5年後までに全社売上高5億円を目指す
- 13 編集後記
創業142年の卒塔婆メーカーがBtoBサイト「卒塔婆屋さん」を作った理由
株式会社フューチャーショップ 取締役 安原貴之(以下、安原):本日は谷治新太郎商店さんが「卒塔婆屋さん」の売上を伸ばすために取り組んでいる施策について、お話をうかがいます。はじめに、貴社の事業概要と、BtoBサイトを立ち上げた経緯を教えていただけますか?
有限会社谷治新太郎商店 代表取締役 谷治大典さん(以下、谷治さん):弊社は「卒塔婆(そとうば)」という、墓石の後ろに並べて立てる木の札を製造しているメーカーです。卒塔婆の一大産地である東京都日の出町で、1882年の創業以来、142年にわたって事業を営んできました。主なお客様は寺院や神社、仏具商社などです。
谷治さん:BtoBサイト「卒塔婆屋さん」を立ち上げたのは2013年8月です。私が谷治新太郎商店に入社して2年目、代表取締役に就任した年でした。
BtoBサイトを立ち上げた理由を一言で説明するならば、昔ながらのやり方では生き残れないと思ったから。卒塔婆の消費量は年々減っていると言われています。若い世代は法要のときに、卒塔婆を立てる習慣が薄れているためです。
2013年当時、弊社の売上高は年々緩やかに下がっていました。長くお付き合いのある寺院や神社からは、安定的に注文をいただけていたものの、このまま何も手を打たなければジリ貧になるという危機感から、新しい取引先を開拓するためにBtoBサイトを開設しました。
卒塔婆のお客様である寺院や神社は、長年取引している卒塔婆メーカーとの付き合いを優先する傾向があり、良くも悪くも取引先が固定化されやすい業界です。当時の私は、たくさんの寺院や神社に飛び込みで営業をかけましたが、まったく契約が取れませんでした。取引先を増やすには、それまでとは異なる新しい販路を作り出す必要があったんです。
業界の常識を覆すEC戦略でシェア拡大。取引先は10年で8倍の5000社に
安原:2013年当時、卒塔婆をECで売っていた会社は他にもあったのでしょうか。
谷治さん:一部の仏具商社などがECサイトで卒塔婆を売っていましたが、弊社のような卒塔婆メーカーが自社ECサイトを運営しているケースは、私が調べた限り1社もありませんでした。
そもそも、当時の卒塔婆業界は卸価格をECサイトに表示することがタブーでした。エンドユーザーである檀家さんに卸価格を知られたら困る、というのが理由です。
弊社が「卒塔婆屋さん」を立ち上げたときも、一部の同業者から「ECで売れるわけがない」「卸価格を公開するなんて、とんでもない」と批判されました。
それでも弊社は卸価格をECサイトに表示し、会員登録しなくても価格がわかるようにしました。卒塔婆を買う側の心理を想像すれば、ECサイトに卸価格が表示されていた方が注文しやすいのは間違いありません。とにかくお客様の利便性を第一に考えて卸価格を公開しました。
安原:業界の常識を覆したのですね。
谷治さん:当時はそこまで大それたことをしたつもりはありませんでしたが、結果的にはそうなりました。
私は結婚して婿に入り、谷治新太郎商店に入社しました。それ以前はスーパー大手で売場レイアウト作成などに携わっていましたから、卒塔婆に関しては門外漢でしたし、ECの知識もなかったんです。でも、だからこそ「モノを売るには、どうすれば良いか」「お客様にとって便利な買い方は、どのような方法か」という本質をシンプルに考え、ECという手法の可能性に賭けました。
その後、BtoBサイトの運営を始めたわけですが、卸価格を公表したことに関してお客様からクレームは一件もありませんでした。それどころか、お客様からは「ECで買えて便利になった」「見積もりを依頼しなくて良いから助かる」といった声をいただきました。
安原:BtoBサイトを開設してから現在まで、取引先の数やEC売上高は、どのくらい増えましたか?
谷治さん:会社全体の取引先口座数は、2013年時点では約600社でしたが、現在は8倍以上の約5000社まで増えました。
「卒塔婆屋さん」の年商は1億円を超えました。ECを始める以前からお付き合いがある取引先との関係を維持しながら、ECで新規の取引先が増えているため、会社全体の売上高も着実に伸びています。
なお、口座数の約8割をEC会員が占めています。ただし、ECで買うお客様は単価が低いため、売上高で計算したEC化率は約40%です。
「卒塔婆屋さん」3つの数字
- BtoBサイトの年商1億円超
- EC化率40%(売上高ベース)
- 取引先口座数5000社
コンテンツSEOでオーガニック流入数は月間10万PV
安原:「卒塔婆屋さん」の売上高が伸びた要因を、どのように分析していますか?
谷治さん:売上を伸ばすために必要だと思うことを何でもやってきた結果だと思っていますので、要因を1つに絞るのは難しいですね。ただ、特に効果があった施策を上げるとすれば、コンテンツSEOに取り組んできたことと、ページ改善のPDCAサイクルを回し続けてきたことです。
安原:その辺りを具体的に深掘りさせてください。まずは、コンテンツSEOの施策を教えていただけますか?
谷治さん:「卒塔婆屋さん」を立ち上げた当初から、卒塔婆に関するあらゆるコンテンツをコツコツ作り続けて、トップページやカテゴリページ、特集ページ、商品ページに掲載してきました。その甲斐もあって、「卒塔婆通販」や「卒塔婆EC」といったビッグワードで検索結果1位を維持しています。
WordPressでブログも運用しています。お寺の住職が知りたい情報を発信し、検索エンジンからのオーガニック流入を獲得するのが目的です。例えば、先日は「後継者不足を乗り越える!お寺の革新的対策と成功事例」という記事を公開しました。過去には、環境条例が改正されて使用済みの卒塔婆を自由に焼却できなくなったタイミングで、条例に対応した焼却炉メーカーを一覧で詳しく紹介したこともあります。コロナ禍の2020年には、Web法要の始め方というテーマで、Zoomの設定方法や配信に必要な機材について解説しました。
安原:ブログは、どなたが書いているのでしょうか?
谷治さん:一部の記事は外部のライターさんに依頼しましたが、基本的には、すべて私が書いています。
記事を書くうえで、SEOのテクニックは意識していません。「顧客が知りたいこと」や「顧客の役に立つ情報」を発信することだけを心がけています。
ただし、サイト構造やタイトル、ディスクリプションといったSEOに重要なポイントは押さえています。サイト構築を依頼した株式会社これからさんにご協力いただきながらサイト構造を設計しました。futureshopの「CMSオプション」を契約してECサイトとWordPressを共通ドメインで運用するなど、futureshopの機能も活かしてSEOを強化しています。
安原:ブログのオーガニック流入数は、どのくらいあるのでしょうか。
谷治さん:ブログ1本あたりの流入数は月間300〜1000PVほどで、すべての記事を合計すると月間10万PVを超えることもあります。
ちなみに「卒塔婆屋さん」の流入元で、もっとも多いのは検索エンジンからのオーガニック流入です。
安原:SEOと並行して、広告も運用していらっしゃいますね。
谷治さん:コンテンツSEOにリスティング広告やGoogleショッピング広告を組み合わせることで、検索結果の上位をジャックする戦略をとっています。
例えば、ショップ名の「卒塔婆屋さん」をはじめ、「卒塔婆通販」や「卒塔婆EC」といったビッグワードでは、オーガニックと広告の両方が上位表示されるように対策しています。検索結果の上位をジャックすることで、コンテンツと広告の相乗効果が生まれ、集客力が高まると考えています。
※出典:画像はGoogleの検索結果画面のスクリーンショット 2024年7月1日時点
オーガニック流入が増えてEC売上高が倍増した成功事例
谷治さん:コンテンツSEOが効果を発揮したエピソードを1つ紹介します。
「卒塔婆屋さん」の売上高が特に大きく伸びたのは、2020年から2022年にかけてのこと。EC売上高が前年比200%を超えた年もありました。
その要因の1つは、ウッドショックで卒塔婆の原材料である木材の流通量が激減し、卒塔婆が全国的に品薄状態になったことです。他の卒塔婆メーカーが軒並み欠品するなかで、多くの寺院や神社、仏具商社がインターネットで仕入れ先を探したのでしょう。「卒塔婆屋さん」のオーガニック流入数が激増し、新規顧客からの注文が殺到しました。
弊社がコツコツとコンテンツSEOに取り組んでいたからこそ、得られた成果だと思っています。
なお、ウッドショックで弊社が欠品しなかった理由は、従前から仕入れ先を買い叩くようなことをせずに適正価格で仕入れていましたし、仕入れのロットも大きいため、優先的に木材を売ってもらえたためです。絶対に安売りしないことと、ECで販売ボリュームを増やしてきたことが幸いしました。
ブログの直帰率が70%から30%に下がった動線改善の方法
安原:コンテンツSEOに取り組んでいるEC事業者さんから、よく聞く課題の1つが、「記事を読んだユーザーが直帰して購入につながらない」という悩みです。「卒塔婆屋さん」では直帰を防ぐために、どのような工夫をしていますか?
谷治さん:futureshopにリプレイスしたタイミングで、WordPressのヘッダーやサイドカラムのデザインをECサイトと統一した結果、直帰率が約70%から約30%へと劇的に下がりました。
デザインを統一したことで、記事を読んだユーザーが商品を探しやすくなり、記事から商品ページに遷移するユーザーが大幅に増えました。リニューアル前は記事ページに「卒塔婆屋さん」のバナーを貼ってはいたものの、商品を直接検索できるようなUIではありませんでした。
また、ECサイトとブログのデザインが統一されたことで、記事から商品ページに遷移する心理的ハードルが下がったことも、離脱率が下がった要因だと考えています。リニューアル前のデザインだと、読者心理としては、ブログから別のECサイトに遷移する感覚だったのでしょう。
動線設計はシンプルに「使い慣れたUI」を重視
安原:「卒塔婆屋さん」の動線設計で、意識していることはありますか?
谷治さん:買い物の動線は、できるだけシンプルに設計することを意識しています。販促ツールや機能をたくさん実装すると、改善した気分になりますが、それで本当にお客様が買いやすくなるとは限りません。私自身、かつて機能をあれもこれも欲張りすぎて、逆に使いにくいサイトにしてしまったことがあります。自戒の念も込めて、無駄なものを削ぎ落とすことを常に意識しています。
お客様にとって使いやすいECサイトとはどのようなものかを考えると、「使い慣れている」ことも重要だと思っています。ECサイトの動線に絶対的な正解はないと思いますが、1つの答えを出すとするならば、「使い慣れているUI」ということになるのではないでしょうか。
こうした考えにもとづいて、「卒塔婆屋さん」を2023年5月にリニューアルした際は、買い物の動線やコンテンツの配置を大きく変更しませんでした。
それから、動線設計という観点では、ご利用ガイドのページにECサイトの使い方を詳しく説明していたとしても、その説明をお客様が見つけられなければ意味がありません。例えば「送料」「納期」「決済方法」は、多くのお客様が気にする情報です。これらの情報をご利用ガイドだけでなく、カートボタンの周りに表示して分かりやすく伝えた結果、コンバージョン率を改善することができました。
アクセスデータを毎朝チェックして買い物動線を改善
安原:ページ改善のPDCAサイクルを回し続けてきたことも、「卒塔婆屋さん」の売上拡大につながったとおっしゃっていましたが、具体的にどのようなことを行ってきたのでしょうか。
谷治さん:商品の説明文やマイクロコピー、商品画像、バナー、ボタンなど、あらゆるコンテンツを毎日チェックして、不自然な表示や分かりにくい言い回し、買い物の途中で離脱しそうなポイントなどを見つけては、細かい修正を重ねています。
GA4やfutureshopの分析機能、ヒートマップツールなどを使ってアクセスデータを毎朝チェックし、前日のアクセス数が多かったページや離脱率が高いページ、ボタンやバナーのクリックスルーレートなど、主だった指標を確認するのも日課です。
「卒塔婆屋さん」に投稿されたレビューや、カスタマーセンターに寄せられたご意見もコンテンツの改善に活かしています。
ページを改善したら、効果検証のABテストを行います。そうやって、お客様にとって便利なUIやUXを追求してきました。
安原:PDCAサイクルを回し続けているのですね。
谷治さん:そうですね。「卒塔婆屋さん」のコンバージョン率は、PCサイトが約6%、スマホサイトは約2%です。この数字を少しでも上げるために、地道にページを改善し続けています。
私の経験上、コンバージョン率を劇的に改善できる“魔法の杖”はありません。地味で手間がかかる作業だとしても、買いやすいショップにするために、コンテンツ作りやページ改善を徹底的にやり抜く。ECの売上を伸ばし続けるには、それしかないというのが持論です。
BtoBサイトのプラットフォームにfutureshopを選んだ理由
安原:せっかくインタビューの機会をいただきましたので、2023年5月に「卒塔婆屋さん」のプラットフォームをfutureshopにリプレイスしてくださった理由を、あらためてお聞かせいただけますか?
谷治さん:futureshopは「やりたいことを実現できるプラットフォーム」だと感じたのでリプレイスしました。
2020年ごろから、「卒塔婆屋さん」の売上高が伸びたことで、それまで使っていたECプラットフォームでは対応しきれないことが増えていました。ECプラットフォームの機能や仕様が成長のボトルネックになっていたんです。
リプレイスすることを前提に、さまざまなECプラットフォームを比較検討した結果、futureshopは機能が豊富ですし、パーツ機能によってページ制作の自由度も高いなど、「卒塔婆屋さん」をさらに伸ばせると感じました。
ノーコードでもページを編集できる操作性に加え、HTMLやCSSの知識があればデザインの幅が広がることも、自分で手を加えたい私にぴったりでした。
また、オプション機能も豊富で、API連携で使える外部ツールもありますから、工夫次第でやれることが多いと直感しました。
そして、futureshopを導入しているショップさんの事業規模や取り組みなどを調べたところ、SaaS型ECプラットフォームの中で頭ひとつ抜け出しているというか、ワンランク上だと感じたことも決め手になりました。
売れるBtoBサイトを作るために活用しているfutureshopの機能
安原:売れるBtoBサイトを作る上で、役立っている機能はありますか?
谷治さん:たくさんありますが、やはりパーツ機能でしょうね。
ECサイト構築プラットフォームをfutureshopにリプレイスした理由の1つでもあるのですが、commerce creator は商品画像やカートボタンなどページの構成要素をパーツに分割し、パーツごとに編集したり配置場所を変えたりできる自由度の高さがあります。パーツを編集すると、そのパーツを埋め込んだすべてのページに一括で反映されるので、ページ改善の効率という点でも優れています。
「卒塔婆屋さん」では、商品ページごとにコンテンツを変えています。商品ごとに伝えるべき情報や、最適な見せ方が異なるからです。そういったことを実現できたのも、パーツ機能があるからです。futureshop commerce creatorは、私が理想とするネットショップを追求しやすいシステムだと感じています。
谷治さん:それ以外の機能では、マイページ機能も活用しています。顧客ごとの専用ページを作って購入履歴を表示し、簡単に再注文できるようにしました。卒塔婆を買う寺院や神社は、同じ商品を繰り返し購入してくださることが多いため、リピート促進に効果的です。また、大口顧客に対して専用価格で販売するなどイレギュラーなケースでも、マイページの購入履歴を活用することで、そのお客様専用の価格で再販売できています。
それから、バンドル販売機能によるボリュームディスカウントと、会員ステージ機能によるポイント還元は、単価アップやリピート率向上に役立っています。バンドル販売機能では50本セットなどを作り、1本あたりの価格を割安にしています。会員ステージ機能はお客様のステージによってポイント還元率が2%、5%、7%、10%と上がります。
安原:「卒塔婆屋さん」はfutureshopの機能をしっかり活用してくださっているので、弊社としても嬉しいです。
谷治さん:fututrshopは機能もさることながら、電話サポートがあるのもいいですよね。オンラインマニュアルも充実していますが、電話で聞けると解決が早いので助かります。サポートスタッフの皆さんは技術的な質問にもその場で回答してくださることが多く、知識レベルの高さにいつも驚かされます。システム面での手厚いサポートがあるおかげで、新しい施策を打ちたいと思ったとき即座に行動できるのでありがたいです。
卸事業のデジタル化でキャッシュフローが改善
安原:「卒塔婆屋さん」を立ち上げて卸売りをデジタル化したことで、売上以外の部分でもメリットはありましたか?
谷治さん:たくさんありますよ。例えば、キャッシュフローが劇的に改善しました。
FAXや電話で注文を受けて、売り掛けで販売した場合、受注から入金まで2ヶ月ほどタイムラグがあります。でもECはクレジットカード決済がメインなので、受注から入金まで最短2週間です。futureshopと連携している決済代行サービス「SBペイメントサービス」は入金サイクルが早いので助かっています。
また、クレジットカード決済なら、弊社がお客様の与信審査を行う必要はありません。請求書を送付する手間も削減できますし、代金の未回収リスクがないことも大きなメリットです。
安原:BtoBサイトを立ち上げて事業をデジタル化したことで、経営全体にもさまざまなメリットをもたらしているのですね。
谷治さん:そうですね。「卒塔婆屋さん」を立ち上げてから数年は、月商が数千円という月もあって、本当に大変でした。でも、信じてやり続けて良かったです。
脱・価格競争に成功した独自のサービスとは?
安原:近年、BtoBサイトを開設する卒塔婆メーカーも増えてきました。競合と差別化するために、どのような施策を打っていますか?
谷治さん:サービスを磨くことで差別化しています。
例えば、お客様の都合でも返品・交換・返金ができる保証制度では、「間違えて注文してしまった」「商品の実物を見たら、イメージと違った」といった場合でも、商品到着後1週間以内で未使用といった条件を満たし、送料をご負担いただければ、手数料無料で返品・交換・返金に対応しています。
また、2017年に業界に先がけて始めた「バラ売り」も差別化につながりました。それまでの卒塔婆業界の商習慣では、卒塔婆を数百本単位でまとめ買いするのが当たり前でしたが、「使う分だけ買いたい」「お試しで商品を見たい」というお客様のニーズに応えて1本単位でご注文いただけるようにしました。
バラ売りは出荷効率が悪いですし、商品代よりも送料が高くついてしまうといったデメリットもありますが、さまざまな経営努力によってデメリットを克服し、バラ売りサービスを続けています。
私は、安売りで差別化することだけは絶対にしたくありません。適正な価格で仕入れた商品を、適正な価格で販売し、価格に見合った品質とサービスを提供するスタンスです。そういった姿勢を続けていたからこそウッドショックのときも欠品せずにすみました。安易な価格競争を避けるためにも、ECサイトの使い勝手やサービスを磨いていきたいです。
ECを軸に5年後までに全社売上高5億円を目指す
安原:最後に、谷治新太郎商店さんの事業の展望をお聞かせください。
谷治さん:5年後に全社売上高5億円を目指しています。卒塔婆の市場規模は、弊社の推計では20億円ほどですので、市場シェア25%というチャレンジングな目標です。
この中期計画を達成するには、EC事業の成長が欠かせません。良い商品を適正価格で販売し、お客様にご満足いただけるサービスを提供するとともに、お客様にとって一層買いやすいECサイトを作っていきたいです。そのためにも、futureshopのさらなる進化に期待しています。
安原:「卒塔婆屋さん」の事業成長を後押しできるように、futureshopをより良いプラットフォームにしていきます。本日は貴重なお話をお聞かせいただき、ありがとうございました!
編集後記
ECサイトのアクセスデータを毎朝チェックするのが日課だという谷治社長。PDCAサイクルの実行スピードを上げるために、ページ改善を自分で行えるようになるまで、独学でHTMLやCSSを学んだそうです。顧客である寺院や神社のインサイトを探り、喜ばれるサービスを常に考え続けている経営トップとしての姿勢も印象的でした。
谷治社長のECへの向き合い方や、これまで取り組んできた施策の数々は、BtoB-ECを強化していきたい事業者さまはもちろんのこと、BtoC-ECの事業者さまにとっても示唆に富むものだったのではないでしょうか。
そして、ECに本気で取り組んでいる谷治社長が「卒塔婆屋さん」のECプラットフォームにfutureshopを選んでくださったことは、大変喜ばしいことであると同時に、身が引き締まる思いでした。株式会社フューチャーショップはこれからも、ECに本気で向き合っていらっしゃる事業者さまが心置きなくECに取り組めるように、機能追加やバージョンアップを行って参ります。futureshopのさらなる進化にご期待ください。