ECにも活用できる「TikTok」見込み客にリーチする動画制作と広告運用のコツ【セミナーレポート】
- 2025.06.26
2025.06.26
“TikTok売れ”を狙い、ECのマーケティングにも活用されている「TikTok」。コマース機能「TikTok Shop(ティックトック・ショップ)」が2025年から日本でもスタートするというニュース※1も話題を集めています。
TikTokマーケティングに挑戦すべく「TikTokの最新トレンドを把握したい」「バズるショート動画の特徴を知りたい」「TikTok広告を試してみたい」と考えているEC事業者さまも多いのではないでしょうか。
そこで株式会社フューチャーショップは、自社ECサイトにおけるTikTok活用法を解説するオンラインセミナーを2025年4月に開催しました。
本稿では、セミナーで解説したTikTokマーケティングのノウハウや成功事例をお伝えします。次のような内容を解説していますので、TikTokを使って自社ECサイトの集客や売上アップにつなげたい事業者さまは、ぜひご一読ください。
- TikTokの最新トレンド
- “TikTok売れ”が発生する仕組み
- 新規顧客にリーチする方法
- バズを生み出す「界隈消費」
- ショート動画の成功事例
- コンバージョンにつながるTikTok広告のコツ
※1 出典:日本貿易振興機構「TikTok Shop、6月に日本でサービス開始の見通し」2025年3月5日
本稿は2025年4月22日に開催したオンラインセミナー「TikTok広告はここで差がつく!クリエイティブの最新トレンドと勝ちパターン」をもとに構成しています。
目次
スピーカー紹介
オンラインセミナーで講師を務めてくださったのは、インフルエンサーマーケティングやSNS広告の運用代行などを手がけている株式会社TORIHADAの担当者さま。約3100組(総フォロワー4億人)の所属クリエイターを抱え、縦型ショート動画の制作・運用支援の実績が累計6000件以上という同社の知見を踏まえ、TikTokの最新トレンドや動画制作のコツなどを解説していただきました。

株式会社TORIHADAはTikTokをはじめとする各種SNSを主戦場に、縦型ショート動画の制作やインフルエンサーマーケティング、広告の運用代行などを手がけている
株式会社TORIHADA
ビジネスサクセス事業本部1局
Account Manager
大橋 正宣 氏
大学卒業後に株式会社TORIHADAに新卒入社。SNS広告を専門にショートムービークリエイティブ制作に携わり、認知拡大施策はもとよりCVR改善に多数従事。大手ゲーム会社や化粧品メーカー、音楽レーベル、VODなど多岐に渡る企業のPR施策を担当。市場のトレンドを的確に捉え、データ分析やクリエイティブ戦略を駆使することで、最適なマーケティングソリューションを提供している。
株式会社TORIHADA
ビジネスサクセス事業本部1局
Ad Strategy
池田 優作
2019年にデジタル広告代理店の株式会社バントへ転職後、2020年10月より株式会社電通に出向。ナショナルクライアントを対象に、認知から獲得まで一貫した広告戦略の立案・運用に従事。2024年7月より株式会社TORIHADAに参画し、インフルエンサー施策を含む広告全体の戦略設計と実行を担当。多様な業種で培った知見を活かし、SNSを軸としたマーケティングソリューションを提供している。
10〜50代まで幅広い年齢層がTikTokを利用
まずは、TikTokの利用状況やプラットフォームの特徴をおさらいしておきましょう。TikTokは2016年に中国で誕生し、日本では2017年にローンチされました。日本国内における利用状況について、TikTok Japanが公表した調査レポートによると、2024年3月に国内約1万人を対象に行った調査では回答者の28.6%が1年以内にTikTokを利用したと回答しています※2。
※2 出典:TikTok Japan「TikTok Socio-Economic Impact Report 2024 日本における経済的・社会的影響」2024年5月
TikTokは高校生やZ世代など若年層が使うプラットフォームというイメージもありますが、利用者の年齢層について大橋さんは「現在のボリュームゾーンは34歳の女性」と説明。利用者の年齢は10代〜50代以上まで幅広く、TikTok広告などを活用すると「若年層以外にも、しっかりリーチできる」と強調しました。
TikTokは10代から50代以上まで、幅広い年齢層にリーチできるプラットフォームです。弊社が広告運用を支援しているクライアントさまの約半数は、Z世代よりも上の年齢層をターゲットにしています(大橋さん)
“TikTok売れ”が発生する仕組みとは?
TikTokがECのマーケティングプラットフォームとして注目を集めている理由の1つは、TikTokで話題になった商品がヒットする“TikTok売れ”と呼ばれる現象が見られるためです。
TikTokの購買促進効果に関するデータはさまざまなものがありますが、例えば、TikTok Japanが公表した調査レポートによると、TikTok利用者の30.5%がTikTokのコンテンツを見て商品やサービスを購入した経験があると回答しています※3。
※3 出典:TikTok Japan「TikTok Socio-Economic Impact Report 2024 日本における経済的・社会的影響」2024年5月
- TikTokでコンテンツを見て商品やサービスを購入した経験について、TikTokユーザーの30.5%が「購入経験あり」と回答
- 若年層ほど購入経験の割合は高い傾向にあるが、60代でも17.6%が経験があると回答
- TikTokを見ることで生まれる消費の対象は、金融・保険、家具・家電、ファッション・コスメ、飲食料品、その他の消費財、旅行・レジャー、個人向けサービス、情報通信(LIVE配信や漫画アプリなど)など、幅広いカテゴリに及ぶと推定される
※4 出典:TikTok Japan「TikTok Socio-Economic Impact Report 2024 日本における経済的・社会的影響」2024年5月
続いて大橋さんは、“TikTok売れ”が発生する理由として「TikTokを使うと”これから好きになるもの”に出会える」(大橋さん)ことを挙げました。
TikTokのユーザーは、自分がフォローしているアカウントが投稿した動画よりも、「おすすめ」のタイムラインに流れてきた動画をたくさん見る傾向があります。「おすすめ」にはユーザーが「今、好きなもの」だけでなく「これから好きになるもの」も流れてきます。つまり、商品と親和性が高いユーザーが、その商品を発見しやすい仕組みになっているということです(大橋さん)
TikTokのタイムラインには「検索」「フォロー中」「おすすめ」という3つのタブがある
- 検索・・・検索にもとづくコンテンツが表示される
- フォロー中・・・フォローしているユーザーが投稿したコンテンツが流れる
- おすすめ・・・ユーザーの興味・関心に沿ったコンテンツが流れる
「おすすめ」のフィードを、いかにジャックするか。“TikTok売れ”を生み出すには、プラットフォームの特徴を掴んで、適切な施策を打っていくことが重要です(大橋さん)

TikTokに関する各種資料を紹介しながらTikTokの特徴を解説した
認知獲得から購入までの3ステップ
続いて大橋さんは、企業がTikTokマーケティングに取り組む上で押さえておくべきポイントを解説してくださいました。TikTokを活用して潜在顧客にリーチし、認知を獲得した上で購入へとつなげるための注意点として「認知獲得、理解促進・比較検討、購買というカスタマージャーニーに沿って適切な施策を打つことが重要」(大橋さん)と指摘。カスタマージャーニーに沿った施策として次の3つのステップを挙げました。

カスタマージャーニーに沿って適切な施策を打つことが必要
STEP1 認知獲得(商品を知ってもらう)
潜在顧客にリーチして商品の認知獲得を図る上で、押さえておくべきキーワードとして大橋さんは「界隈消費」を挙げました。「界隈」という言葉は「近辺」や「一帯」といった本来の意味から転じて、好みや価値観を共有する人たちがSNSなどでつながり、緩やかなコミュニティを形成している状態を表す言葉として使われています。例えば「アニメ界隈」「美容界隈」「K-POP界隈」という広いものもあれば、「淡色界隈」「愛犬界隈」など、特定の状況にある人や行動をする人をくくる、トレンドワード的な使い方もあります。
大橋さんは「界隈消費」の特徴について、「界隈で商品が話題になると、熱量の高い共感が生まれる」と説明した上で、「1つの界隈で商品が話題になると、その熱量が隣接する界隈にも伝播していく」(大橋さん)と指摘しました。例えば、ファッションカテゴリであれば「ストリート界隈」で流行ったものが「地雷系界隈」へ波及し、さらに「古着系界隈」に広がっていくといった現象が見られるそうです。
狙うべきターゲット層の「界隈」を見定めて、その界隈に刺さる情緒的便益を織り込んだクリエイティブを発信し、熱量の高い共感を生み出す。そして、他の界隈への伝播を狙っていく。これが動画をバズらせるポイントです(大橋さん)
クリエイティブの成功事例
大橋さんは「界隈消費」を狙ったプロモーション施策の成功事例も紹介しました。
コンビニに設置されているマルチコピー機のプロモーション施策において、「愛犬界隈」や「ペット界隈」をターゲットに設定。ペットの写真をマルチコピー機で印刷し、システム手帳やスマホケースの裏などに貼って持ち歩くライフスタイルを訴求するショート動画を配信しました。500万インプレッションを目標にTikTok広告も組み合わせて運用した結果、LINE登録者が前年比20%増、約2万コンバージョン(クリック数)を達成したそうです。

「界隈消費」を狙ったプロモーション施策の成功事例も紹介した
STEP2 比較検討(検索対策)
企業がTikTokに投稿したコンテンツは、商品を比較・検討している消費者の判断材料にもなります。商品について調べたり、口コミを探したりする検索ツールとしてTikTokが使われるためです。
大橋さんは、TikTokで検索することを“トクる”と表現し、「検索するときに“ググる”ではなく、“トクる”ことが増えている」と説明。商品を比較・検討している消費者の購入意欲を高めるには、TikTokの検索窓にキーワードを入れて検索するユーザーの心理を想像しながら、検索対策の意味合いも含めてショート動画を制作することが重要だと強調しました。
商品に関する動画をTikTokに投稿しておくと、その商品について検索したユーザーが比較検討する際の判断材料になります。検索ユーザーが知りたいことや、気になることを想像し、それらへの答えをクリエイティブに落とし込むことが重要です(大橋さん)
STEP3 購買(ECサイトに誘導する)
TikTokの利用者をECサイトに誘導し、購入につなげる方法について、広告運用を担当している池田さんは「コンバージョンのボリュームを出すにはTikTok広告を活用することも必要」と説明しました。続けて、広告効果を最大化するポイントとして「どのようなコンテンツを、誰に向けて、どのように届けるか。その戦略設計が重要」と強調しました。
【TikTok広告における戦略設計のポイント】
- クリエイティブ戦略(どのようなコンテンツを)
- セグメント設計(誰に向けて)
- PDCAサイクル検証(どのように届けるか)

広告効果を最大化するには「WHAT(どのようなコンテンツを)」「WHO(誰に向けて)」「HOW(どのように届けるか)」の戦略設計が重要
クリエイティブ戦略(WHAT)のポイント
- ショート動画は「最初の3秒(フック)」で勝負が決まる
- 違和感のない導入や、自分ごと化する切り口でユーザーの興味を惹きつける
- 「フック」「課題の提示」「解決策」「CTA(行動を促すフレーズ)」といった構成要素に分解して動画を制作する
TikTokでトレンドになっているテーマや、視聴されやすいフォーマットなどを広告に落とし込むことを意識し、ユーザーにとって面白いコンテンツであり、かつ、TikTokのタイムラインに違和感なく流れるクリエイティブを作ることが重要です(池田さん)

広告クリエイティブ(ショート動画)の構成案と字コンテの例も紹介した
セグメント戦略(WHO)のポイント
- 好意度形成が完了したユーザーに絞ってアプローチする
- ユーザーの「属性」と「興味関心」を掛け合わせてターゲットを設定する
- 年齢、性別、嗜好なども踏まえる
狙うべき「界隈」を的確に捉え、熱が高まっているユーザーにピンポイントで広告を配信することで、コンバージョン率を上げることができます(池田さん)

配信ターゲットを設定する際の考え方を解説した
PDCAサイクル検証(HOW)のポイント
- 広告クリエイティブ(ショート動画)の構成要素ごとに修正したり、構成要素の順番を入れ替えたりしながら、ABテストを行う
- 効果検証および改善のPDCAサイクルを高速で回す
- 商材ごとにクリエイティブの勝ちパターンを見つける
フックの部分は「問いかけ」でユーザーの共感を得るのが有効なのか、それとも「意外性」を持たせた方が良いのか。CTAは「初回無料」と「割引」のどちらがクリックされやすいのか。こうしたことをABテストで検証し、商材ごとの勝ちパターンを見つけていきます(池田さん)

広告クリエイティブを構成要素に分割し、構成要素ごとに修正したり、順番を組み替えたりしながら効果検証を行う
TikTokマーケティングの効果を出すには「継続」が大切
セミナーの最後に実施した質疑応答では、参加者の方から「EC事業者が自分たちでTikTokアカウントを運用する際のポイントを教えてほしい」という質問も寄せられました。大橋さんは「成果を出すために一番大事なのは継続すること」と回答。TikTokアカウントの運用を半年〜1年ほどで辞めてしまう企業が多いことにも言及し、「効果が出る前に諦めないことが重要」と訴えかけ、セミナーを締め括りました。
TikTokアカウントの運用を始めても、効果が出る前に辞めてしまった企業を何百社と見てきました。自分たちで運用するなら、途中で諦めず、しっかりやり切ることが大切です。縦型のショート動画を作るには企画・撮影・編集と工数がかかります。広告配信はターゲット設定や運用の知見も必要です。自分たちだけで手が回らない場合には、プロに任せるのも続けるコツだと思います(大橋さん)

コンテンツの設計からクリエイティブ制作、キャスティング、広告運用、効果検証まで、TikTokをはじめとする、さまざまなプラットフォームでショート動画のマーケティングを支援している
まとめ
今回のオンラインセミナーでお伝えしたように、TikTokはECのマーケティングツールとしても広く活用されています。今後、TikTokのコマース機能「TikTok Shop」が日本でもリリースされれば、マーケティングプラットフォームとしてTikTokの存在感は一層高まるでしょう。TikTokマーケティングがさらに活発化する可能性も見据えて、今から知見を溜めておくためにも、TikTokアカウントの運用やTikTok広告に挑戦してみるのも良いのではないでしょうか。特に、これまで活用してきたメディアの集客効果が頭打ちになっているEC事業者さまは、TikTokを取り入れることで、新たな顧客層にリーチできるかもしれません。
TikTok for Businessを自社ECサイトに連携する方法
EC事業者さまがTikTok広告を効果的に運用するには、ECサイトと「TikTok for Business」を連携することが重要です。ECサイト構築プラットフォーム「futureshop」をご利用中の店舗さまは、futureshopの管理画面から「TikTok設定」へと進み、「認証を取得する」を押して「TikTok for Business」にログイン(またはアカウント登録)するだけで自動連携が完了します。
自動連携を完了すると、futureshopに登録している商品情報をAPIでTikTokに連携(1日1回)できるほか、TikTok広告のコンバージョン測定も行えます。「アドバンスマッチング」という仕組みによってECサイトの顧客情報とTikTokユーザーをマッチングし、TikTok広告の配信を最適化することで、広告のパフォーマンス向上を図ることも可能です。「TikTok for Business」との連携機能の詳細は下記ページをご覧ください。

オンラインセミナーでは、株式会社フューチャーショップの駒井が「TikTok for Business」とfutureshopの連携機能についても解説した
ECサイト構築プラットフォーム「futureshop」についてのご相談やご質問も随時受け付けています。株式会社フューチャーショップへのお問い合わせをご希望の方は、下記バナーより問い合わせページに遷移し、フォームに必要事項を入力して送信してください。