来店数激減からECでV字回復!「筋肉食堂」のD2C立ち上げが成功したワケ

筋肉食堂インタビュー:D2C立ち上げが成功したワケ

新型コロナウイルス感染症の影響によって、外出を自粛せざるを得ない状況になり、窮地に陥った飲食店は多くあります。

高タンパク・低カロリー食レストラン「筋肉食堂」を運営する、TANPAC株式会社(以下、TANPAC)もそのひとつ。コロナ禍で実店舗の営業が厳しくなり、来店数と売り上げが大打撃を受けるなか、わずか3週間でECサイトを立ち上げました。

2020年7月8日からテスト販売をスタートさせると、1ヶ月で数千食が売れるという状況に。筋肉食堂のECはSNSでも話題になっています。

なぜTANPACは、危機的状況をスピーディに逆転させ、ECを新規事業として成功させられたのでしょうか?ECサイト立ち上げのプロジェクトを進められた、TANPAC 中食事業部 角南皓祐(すなみこうすけ)さんにお話を伺いました。

聞き手:株式会社フューチャーショップ  カスタマーコンサルテーション部 ECコンサルタント 稲生達哉

TANPAC 会社紹介

筋肉食堂の外観

『高タンパク』『低カロリー』料理を事業の軸にした、食のソリューションを提供するベンチャー企業。メインはレストラン事業で、「筋肉食堂」を六本木、水道橋、渋谷、銀座に店舗を構える。2018年丸の内にて、お弁当専門店「筋肉食堂 丸ビルDELI」の出店で中食事業をスタート。

そして、2020年5月に新たに宅食サービスが立ち上がり、2020年7月8日からECサイトがオープン。SaaS型ECサイト構築プラットフォーム「futureshop」で構築・運用している。

コロナの影響で、店舗運営は大打撃。でも、料理を作ることはできる

筋肉食堂来店数激減からECでV字回復!D2C成功のインタビュー風景

左から:株式会社フューチャーショップ・稲生達哉/株式会社フューチャーショップ・山本大介/TANPAC株式会社 角南皓祐さん

株式会社フューチャーショップ・稲生達哉(以下、fs稲生): まず「筋肉食堂」が誕生した経緯について教えてください。

TANPAC 角南さん: 10年に渡りパーソナルトレーナーとして活動してきた谷川(現ブランドマネージャー)は、身体を変えるにはトレーニング以上に食事の管理が大切であると考えていました。ただ、指導しながらも実際に食事への意識を変えることは難しく、また、高タンパク・低カロリーの食事を提供している飲食店が無いのが実状でした。

また、社会課題としても、糖尿病や脳卒中、心臓病などの生活習慣病が増えており、多くの現代人は食事内容を見直さなければならないと考えていました。

そこで、身体づくりを志す人たちへ、美味しい高タンパク低カロリーの食事を自ら提供したいと考え、2015年にTANPACを創業。そして2015年12月、六本木にレストラン「筋肉食堂」をオープンしました。

筋肉食堂:六本木店の内装の様子

現在は、渋谷や銀座、丸の内、水道橋など、身体に対する意識が高い人たちが集まるエリアに出店しています。トレーニング後のビジネスマンやアスリート・プロスポーツ選手、テレビなどで活躍する意識の高い芸能人の方も通ってくれたりして、徐々に認知が広がっていきました。

fs稲生: 食材に対してのこだわりを教えてください。

TANPAC 角南さん: 高タンパク・低カロリーとなると、食材は限られてきますし、毎日同じ味付けで食べるのは飽きてしまいます。そのため、毎日食べられるようにさまざまな味を用意したり、「いかにやわらかく食べやすくするか」といった家庭では実現できない調理法などの研究を重ね、メニューを作っていきました。

「筋肉食堂」で提供しているのは、料理だけではありません。「減量中」「筋肉量を増やしたい」など、お客様の現状と目的に合わせた価値を提供できるよう意識しています。目的によって摂るべき食事が異なってくるので、お客様にヒアリングをしてメニューのご案内をすることもあります。

例えば、ダイエットというと「食事制限をして、できるだけ食べない」とイメージされる方が多いでしょう。しかし、実はそんなことはありません。

お客様に「ここまでは食べていいよ」という情報も含めて伝えていくことで、精神面と健康面でうまくバランスを取りながら、食事を楽しんでいただくことを目指しています。

筋肉食堂のメニュー写真

fs稲生: 新型コロナウイルス感染症(以下、コロナ)の影響で、御社はどのような状況になりましたか?

TANPAC 角南さん: 緊急事態宣言が出て以降、レストランへの来店数が急激に落ち込みしました。当然、売上も・・・です。

また、弊社はレストラン事業だけではなく、中食事業(お弁当の提供)も展開しています。丸の内や汐留の商業施設にてお弁当を販売していましたが、緊急事態宣言で商業施設自体が閉店となってしまいました。

さらに大きな痛手となったのが、緊急事態宣言が出る前の2020年2月、中食事業を拡大するために、数千食単位のお弁当を製造できる自社工場を立ち上げていたことです。

今振り返れば「立ち上げてしまった」という表現になると思います。これから中食事業を拡大していこうという矢先に、工場がただの箱になってしまい、急に扉が閉ざされたような状況でした。

fs稲生: 危機的状況に陥っていたのですね……。店舗も工場も、毎月の経費が掛かると思いますが、今後どうしていこうという話になったのでしょうか?

TANPAC 角南さん: 最初は、工場の周辺地域に住んでいる方に向けて、お弁当を販売しようと考えました。しかし、もともとは複数の商業施設、法人企業に一定数以上の納品をすることでコストが見合う想定だったので、特定エリアだけでのお弁当販売では補いきれません。

おっしゃる通り、店舗も工場も、稼働していなくてもコストが掛かるため、何か別の手立てを考えて迅速に動いていく必要がありました。

みなさんが自宅にいる状況のなか、自分たちに何ができるだろう。そう考えた結果、自然と「私たちにできることは、店舗に来られなくなった方々の自宅に、お弁当を届けることだ」という発想に。こうして、5月のゴールデンウィーク前にプロジェクトが発足しました。

ECサイト制作の期間は3週間。急ピッチで進められたEC立ち上げプロジェクト

稼働する工場の様子

fs稲生: ECの立ち上げが急に決まり、バタバタされたのではないかと思います。

TANPAC 角南さん: そうですね。もともと、D2Cという個人宅への販売は常に議題にあがっていたのですが……法人向けへの拡販を走り始めた矢先、コロナ禍で窮地に陥り、それをきっかけに慌ただしくスタートしました。冷凍のお弁当を作るノウハウはなかったし、やること・決めることがあまりにも多かったので、現場は混乱していましたね。

例えば、通販で提供するメニューをどうすべきか? 冷凍にするなら、どのように工場のオペレーションを組めばいいのか? ECサイトは、どうやって作ればいいのか? どんな商品ページにするのか? 1個で販売するのか、セットにするのか? 価格や送料はどうするのか? ECの受注から発送までは何をすればいいのか? など。

これらを決めながら、急ピッチで準備を進めていきました。私自身、忙しすぎて顔がこけ、周りから心配されるほど疲弊している状態だったようです。

ただ、未曾有のウイルスに負けず、私たちの料理を必要としている方にお届けし、「筋肉食堂」の世界観を広げていきたかった。その一心で腹を括り、日々EC立ち上げプロジェクトに向き合っていました。

fs稲生: 新規事業に苦労はつきものですが、御社はかなりのスピード感で進められていて、本当に大変だったと思います。ECサイトの構築では、「futureshop」を採用すると決めていただいたのは、プロジェクトが立ち上がって約1カ月も経たない5月末でしたね。

TANPAC 角南さん: はい。大手冷凍食品メーカーや大手外食チェーンが『宅食』をターゲットした商品やサービスのローンチが続いていたので、その流れに乗り遅れないためにも6月末にECサイトをオープンする腹づもりで6月前半はレストランの総料理長やアスリートサポート事業部の責任者などにもECチームに参加してもらい、スタッフは総動員。『レストランの味をご家庭でも』のコンセプトにこだわり、同時に栄養バランスの良いメニュー内容を実現するため、6月はひたすら商品の改良に打ち込みました。

そのため、ECサイトの制作で取れた時間は3週間ほど。このタイトなスケジュールでもサイト構築をしてくださった制作会社の方から「futureshopにしましょう!」という熱いプッシュがあり、その熱量に影響を受けながら急ピッチで進めて、7月8日にECサイトをオープンできました。

fs稲生: ECサイトを早急に立ち上げられたのは、コロナによって売り上げが落ちたことが要因でしょうか?

TANPAC 角南さん: もちろん、すぐに手を打って、売り上げをリカバリーしたかったことも理由の1つです。それに加えて、「どんなお客様が購入しているのか」という情報が把握できるデータベースを自社で持ちたいと思っていました。

個人情報など、実店舗ではなかなかデータ化するのが難しい情報も、ECであれば把握することができます。そして、集まったデータをもとに「ECにどれだけポテンシャルがあり、新規事業の柱として可能性があるのか」を見極めたかったのです。

そういった理由でECサイトを3週間で立ち上げ、「8月末までは毎週300食」と出荷数を絞り、テスト販売をすることにしました。

1カ月で数千食以上が売れた。テスト販売から本格販売へ

お弁当製造過程の様子

fs稲生: ECサイトがオープンしてから、売れ行きはいかがでしたか?

TANPAC 角南さん: オープン初日は100件以上の受注があり、1カ月で数千食が売れました。

4月以降の事業計画と照らし合わせると、コロナで失った売り上げを、ECサイトの売り上げでようやくカバーできてきたところです。

InstagramをはじめとしたSNSで「ネットで筋肉食堂のお弁当を買った」と投稿してくれるお客様もたくさんいらっしゃって、ありがたいですね。弊社はInstagramをお客様とのコミュニケーションツールとして使っており、新メニュー等のお知らせも投稿しています。

Instagramは弊社の集客の要でもあるため、投稿から直接ECサイトに訪問していただける導線がつくれたことは、売上にも大きく貢献してくれました。(これまで地道にフォロワー数の獲得をKPIと置いて取り組んでいたことが功を奏しました)

futureshopの「commerce creator(コマースクリエイター)」を使っていることで、サイトの管理もしやすく、お客様も購入がスムーズにできるので、良い流れが生まれていますね。

※commerce creator(コマースクリエイター)とは?
futureshopで利用できる新CMS機能のこと。ECサイトの要素一つひとつを「パーツ」単位に分割し、システム提供分と、独自に作成できるパーツを組み合わせ、ECサイトを構築できる。

fs稲生: そう言っていただけてうれしいです! Instagramでは、消費者とどのようなコミュニケーションが発生していますか?

TANPAC 角南さん: ECサイトのオープンを知らせる投稿をしたときは、「待ってました!」と喜んでくれる方が多くいらっしゃいました。今は、お弁当の感想をはじめとして、容器の大きさや味付けなどのご要望もいただいています。

こうしたお客様の声は、InstagramのDMやコメントだけではなく、「futureshop」のレビュー機能や公式ブランドサイト内の問い合わせフォーム、Facebookのメッセンジャーから届いていまして、こうしたメッセージはすべて私ひとりで対応していました。

fs稲生: おひとりですか……! かなり負担のかかるオペレーションではないでしょうか?

TANPAC 角南さん: そうですね。メッセージの返信以外にも、受注データを出して梱包作業をし、発送完了メールを送るまで、すべて私がやっていました。梱包なんて、毎日100個単位でひたすら包み続けましたよ。

オペレーションを組むなかで立ち止まることがあったら、その都度、futureshopのサポートに電話をかけていました。ひとりで進めている状況だったので、丁寧に相談に乗っていただけてありがたかったです。

fs稲生: 最初はわからないことが出てくることも多いですし、1つ1つの疑問がパズルを解くような感覚で時間がかかると思うので、どんどん聞いていただければと思います。オペレーションをある程度組んだあとは、どうされたのでしょうか?

TANPAC 角南さん: さすがにひとりでこのまま続けるのは無理があったため、8月からは新しいメンバーに店舗から異動してもらい、オペレーションのワークフローを整理して引継ぎました。3週間ほどたった今、ECサイト運営の実務が私の手からほぼ離れたので、私は広報やPR、アライアンス組みの動きにシフトできています。

fs稲生: そうして現場を引き継いだあと、今、本番販売の準備を進めている、と。そもそも、なぜ最初にテスト販売からスタートしたのでしょうか?

TANPAC 角南さん: テスト販売をした理由は、製造量にキャパシティがあるからです。

工場では、チルド弁当も製造しているため、冷凍弁当を作れる量は限られています。加えて、設備も十分に整っていない状況だったので、一度に多くの量を製造できませんでした。

あとは、ECのオペレーションがわからなかったことも理由のひとつです。ECの流れを把握せずにどんどん注文を受けてしまうと、うまく受注をさばけずにパンクする可能性があったため、まずは様子を見ながらベストなオペレーションを組み、お客様にご迷惑をおかけしたく無い一心でテスト販売からスタートさせました。

現在はECの売り上げが伸びているので、冷凍設備を追加投資したり、製造メンバーの積極的な採用を行うなどしています。テスト販売をしたことで事業拡大の目処も立てられており、これからどんどん注文を受け付けていきたいです。

プラットフォームから“ブランド”を守る。世界観をECで実現させるためには?

筋肉食堂D2C成功インタビューの様子

fs稲生: ECサイトを本格オープンされて、これからやっていきたいことはありますか?

TANPAC 角南さん: 大きく分けて3つあります。

1つ目は、これまで弊社製造都合で発送日を指定していたシステムを、お客様自身で商品の希望到着日を指定できるシステムにすること。
2つ目は、「エブリデイ」「ダイエット」「バルクアップ」というお客様のトレーニングシーン、ニーズに応じたメニュー開発。ラインナップの拡充。
3つ目は、定期便(サブスクモデル)の販売スキームを作ることです。

やりたいことはたくさんあります。いずれは、お弁当ではなくおかず一品単位で販売したり、オリジナルグッズの販売を考えたりもしたいです。

fs稲生: ECを始めたことによって、「筋肉食堂」の可能性がさらに広まったのではないかと感じます。

TANPAC 角南さん: そうですね。オムニチャネル、つまりレストラン実店舗があることを最大限に活用したいです。

ブランドの世界観を伝えたり、できたてアツアツの料理を召し上がって「美味しい」という感動体験を提供できる場がありますので、クーポン機能ポイント機能など「futureshop」のさまざまな機能を積極的に使って、EC利用者を店舗へ誘導したいですね。コロナが落ち着くことを願うばかりです。

fs稲生: ぜひ、使い倒してください!
最後に、コロナ禍で苦しんでいる飲食店や、ECに興味をもっている飲食店に対して、角南さんはどんなアドバイスをしたいですか?

TANPAC 角南さん: 多くの飲食店は販路を拡大するために、デリバリー/出前サービスのプラットフォームを利用するのではないでしょうか? ただ、大手プラットフォームでは注文総額に対して決して安く無い手数料を徴収され、利幅が減ってしまいます。

その結果、「たくさん売らなければ」と焦ってしまい、数を売るために忙しくなってしまうので、事業を成長させる術を思考する時間が持てない状況になってしまうこともあるかと思います。

そこで一旦、考えてみてください。プラットフォームを利用することで、本当に自社の利益は上がっていますか? 注文が来ても配送員が来なくて、お客様からキャンセルが入り、機会損失をしていませんか?

こうしたマイナスの要素は、だんだん自社のブランドを傷つけていきます。だって、お客様は「あの店で料理を頼んでも、全然来なかった」といったように、“店側の責任”だと考えてしまいますから。

だから私は、ブランドを守るためにも、プラットフォームに乗っかるのではなく、自社で直接お客様へと商品を届ける「D2C」を選びたいと思います。

「お客様とのコミュニケーションを重視して、時に相談に乗りながら食の提案をする」という弊社の大切にする世界観をインターネットで実現するには、自社でECを立ち上げることが最善策でしょう。

……と、ここまで話しましたが、「設備が整っていなくてECに手が出せない」「ECサイトを作る予算がない」と頭を抱える飲食店の方が多くいるはずです。ただ、弊社が初期投資した「真空機」は1台50万円で設備投資としては想定よりも安価でしたし、地域によっては設備投資やサイト制作に補助金が出る場合もあります。

そして、「そもそもITリテラシーがなく、ECは未知の世界で踏み込めない」と悩んでいる方も多いでしょう。そんな方には、futureshopのようなECの各分野のプロとつながりを持っている会社に相談し、まずは何から動くべきかと聞いてみることをおすすめします。

インタビューを終えて・まとめ

インタビューの最後に、「今後はベンチマーク先を決めて、最短最速で追いつけるように施策を実行していきたい。それを実現できるのが『futureshop』だと思う」と話してくれた角南さん。

「『筋肉食堂』の世界観を、ECを通して広げていきたい」という熱量は、画面の外にいる消費者にもきっと届いているでしょう。いちユーザーとして、今後の成長が楽しみになる取材でした!
 
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自らもEC業界を学びつつ、みな様のお役に立てれば!と 日々奮闘する中の人です。
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