ECの返品対応の流れは?返品理由ごとの対応から返品率を下げる方法まで紹介
- 2024.02.092024.07.19
「自社ECの返品対応フローを見直して改善したい」
「自社ECの返品率と平均値を比べて、必要な対策を講じたい」
といった悩みは、ECサイトを運営する企業の担当者の方に起きがちです。
本記事では「ECの返品対応の流れ」と「返品率を下げる方法」を中心に解説します。記事を読めば、返品を減らす具体的な方法がわかるため、ぜひお読みください。
目次
ECにおける返品対応とは?
ECサイトにおける返品対応とは、消費者が購入商品を返品する際にEC事業者が行う一連の対応を指します。
ECサイトにおいて返品は、販売者側の「配送ミス」や、消費者側の「注文する商品を間違えた」「イメージと異なる商品だった」などの理由により、対応が必要になるケースがあります。
また返品プロセスに関して不便を感じた消費者の33%が「今後そのストアで買い物しない」と答えている一方で、返品に満足した消費者のうち、96%が再度そのストアで買い物する意思を固めています。
そのため、返品の利便性を向上させることで「リピート率のアップ」が期待できます。
ECの返品対応の流れ
ECにおいて返品対応を行う際、対応フローを整理しておくと業務の効率化・迅速な対応につながります。
返品対応の流れは次のとおりです。
- 返品受付する
- お詫びをする
- 返品商品を返送してもらう
- 返品商品を受け取る
- 返金・商品交換の対応を行う
1.返品受付する
まず、ECサイトの「返品ページ」や「マイページ」「カスタマーセンター」などから返品を受け付けます。消費者から返品依頼が来たら、販売者は「商品の状態」や「返品理由」「返品のルール」などを確認しましょう。
返品ルールは、返品ポリシーで「返品を受け付ける条件」や「返送料の負担」などを明示することで「消費者とのトラブル防止」や「スタッフ間の対応統一」などが可能となります。スムーズな返品対応が実現できるため、事前に返品ポリシーを規定しておきましょう。
2.お詫びをする
返品を受け付けると判断したら、次は消費者に対して、お詫びの連絡をします。
商品の「発送ミス」や「初期不良」「破損」などが原因で返品依頼があった場合、消費者に対してのお詫びは必須です。「返品を受け付ける旨」や「謝罪の言葉」「再発防止に努める旨」などを記載します。
消費者都合の場合、不快に感じた内容が返品理由に記載されていれば、その内容に対して謝罪の返答をしますします。また、返品する手間が生じたことに関してもお詫びしましょう。
いずれのケースでも「商品の返送方法」や「送付先」「返送後の流れ」などの内容を詳しくお伝えし、消費者の負担・不安軽減に努めましょう。
3.返品商品を返送してもらう
メールに記載した方法をもとに、消費者に商品を返送してもらいます。このとき、必要に応じて「追跡番号」や「到着予定日」などの情報を消費者から共有してもらいましょう。
返送料の負担は、返品ポリシーで定めた内容に準じて対応します。そのため返送料に関しても、返品ポリシーに明記しておきましょう。
4.返品商品を受け取る
返品商品が到着したら、販売者側で商品の状態を確認します。検品したうえで不備内容がわかる状態にし、店舗・倉庫に返送しましょう。
返品された商品の状態がよい場合、検品したのちに倉庫で保管します。そして「定価で販売する」「価格を下げてセール商品として販売する」といった対応を行います。状態が悪く販売できない場合は破棄しましょう。
5.返金・商品交換の対応を行う
返品商品の状態が確認できたら、消費者に対して「返金」あるいは「交換商品の送付」といった対応を行います。
たとえばサイズを間違えて発送してしまった場合、正しいサイズの商品を消費者に送付するのが一般的です。しかし消費者によっては返金を求めるケースもあるため、要望に応じて対応しましょう。
なお、消費者の要望に全て応える必要はなく、あくまでも返品ポリシーに準じて対応します。トラブル防止のために返品対応のルールを返品ポリシーに明記し、消費者・社内の双方に周知できるよう努めましょう。
ECサイト構築プラットフォーム「futureshop」は、消費者のニーズに合わせた返品プロセスが提供できる「Narvar」と連携しています。オンラインでチャットなどを通じて簡単な手続きをするだけで、商品が返品できます。返品拠点として日本全国約50,000か所が利用でき、スマートフォンに表示されるQRコードを活用した「ペーパーレスな返品」などが可能なサービスです。
ECのおもな返品理由と対応策
ECにおいて、返品対応が必要になるケースは「消費者都合の場合」と「販売者都合の場合」があります。ここでは、それぞれの返品理由と対応策について解説します。
消費者都合の場合
消費者都合で返品される場合、以下の理由が挙げられます。
イメージと異なる商品だった
商品が消費者のイメージと異なった場合、返品を希望するケースがあります。たとえば「思っていたデザイン・カラーではなかった」「サイズが合わなかった」などです。
返品を受け付けないECサイトが多い一方で「購入から○日の間にカラー・サイズが理由で申し出た場合は返品可能」といった返品ポリシーを定めているECサイトもあります。
デザイン・カラーがイメージと異なる場合の返品を防ぐには「商品ページの画像を豊富に掲載する」「商品紹介に動画を活用する」「商品画像をできる限り実物に近づける」といった方法が有効です。商品ページから得られる情報を充実させれば、商品のイメージが描きやすくなります。
また、サイズが原因となる返品を防ぐには「詳細なサイズガイドの掲載」が効果的です。具体的には「商品の寸法」や「素材の特徴」「着用方法」などを記載します。消費者がサイズ測定で参考にできる「測定方法」や「参考画像」の掲載も有効です。
商品ページの情報を充実させ、購入前後のギャップを可能な限り埋めましょう。
商品を間違えて注文した
「商品そのものを間違えて注文してしまった」「カラー・サイズを間違えた」といった理由で返品を希望するケースがあります。この場合、消費者が単に誤って注文した可能性がある一方で、ECサイトのわかりづらい表記が誤った注文を誘発しているケースもあります。
たとえば、1つの商品のカラーバリエーションごとに価格が異なる場合、カラーごとに価格を表示させなければ消費者の誤解を招く可能性があります。「カラー」と「価格」を連動させて表示することで、消費者は間違えずに商品を購入できます。
「間違えて商品を注文してしまった」といった理由で返品の申し出があった場合は、間違いにつながった可能性のある箇所を特定し、ECサイトの改善に役立てましょう。
購入後すぐに破損させてしまった
購入後すぐに消費者側が商品を破損させてしまった場合、返品を申し出るケースがあります。輸送中に破損した場合は販売者に非がある一方で、到着後に消費者が破損させた場合は消費者都合となります。
購入直後の破損を防ぐには、商品の「取り扱い方」や「利用方法」などの動画の公開が有効です。
たとえば、消費者が組み立て式の家具を購入した場合、組み立て中に破損してしまう可能性があります。このときテキストベースの説明書だけでなく、動画も活用して解説すれば、組み立て方法がより具体的に伝わります。
また、取扱説明書に動画にアクセスできるQRコードを記載すれば、消費者の手間も省けます。購入後の破損防止策を講じることで、返品への対応策になるだけでなく「顧客満足度の向上」にもつながります。
販売者都合の場合
販売者都合で返品が起きてしまう場合、以下の理由が挙げられます。
注文と異なる商品が届いた
注文と異なる商品を配送してしまった場合、多くの場合は本来注文された商品の送付によって解決します。しかし、なかには返金対応を求められるケースもあるため、担当者によって対応方法に違いが出ないようにルールを規定・周知しておきましょう。
販売者側が配送先を誤る要因として「注文の受付ミス」や「配送業者との連携不足」などが挙げられます。
注文の受付ミスは「注文情報入力時の内容確認」が重要です。そもそも消費者が入力した情報が間違っている可能性もあるため「送り状発行ソフトに手入力する」「EC受注システムから情報をインポートする」といったいずれの場合も、エラーがないかの確認が必須となります。
また、配送業者との連携不足に関しては「配送状況の追跡システムの導入」が有効です。配送状況が随時確認できるうえに、災害時や繁忙期の遅延に関してもシステムから消費者に通知されます。配送状況の透明性が担保されるため「輸送中のトラブルに気付きやすくなる」「消費者に安心感を与えられる」といったメリットがあります。
初期不良・破損があった
商品に初期不良・破損があった場合、消費者から商品を返送してもらい「問題のない同一商品を再送する」あるいは「返金する」といった方法で対応しましょう。返品された商品は、検品して初期不良の箇所や破損箇所を特定します。
初期不良は、商品の生産時に問題が起きている可能性が高いです。メーカーに対して初期不良を報告し、返品対応を行いましょう。
また商品の破損は、輸送中に起こる可能性が高いです。販売者側では商品の梱包を丁寧に行ったうえで「取り扱い注意」と記載し、配送業者に注意を促しましょう。
返品のルールは「返品ポリシー」で規定する
ECサイトにおける返品のルールは「返品ポリシー」で規定します。返品ポリシーとは、消費者が購入した商品を返品・交換する際のルールや条件を企業側が示したものです。
2020年4月の民法改正により「契約自由の原則」が規定されたため、各企業が定める返品ポリシーは法律より優先されることとなりました。このような背景から、返品・交換に関するトラブルを防ぐために返品ポリシーの重要度は増しています。
返品ポリシーに加えるべき項目
返品ポリシーは、商品の返品・交換に関する指針となるため、以下の項目を盛り込む必要があります。
- 返品・交換が可能な条件
- 返送料の負担
- セール品の取り扱い
- 返品に関する問い合わせの受付時間
返品・交換が可能な条件
ECサイトで購入した商品において、返品・交換が可能な条件を記載します。このとき「注文と異なる商品が届いた」などの「販売者都合の場合のみ」とするのか「イメージと異なる商品だった」などの「消費者都合」も返品・交換を可能とするのかを明確にしましょう。
返品・交換が可能な場合の例として「商品到着後7日以内に返品・交換がリクエストされた」「試着のみ」「タグやラベルなどの付属品がそろっている」などが挙げられます。
消費者都合の場合「開封した商品」や「使用した商品」も受け付けるかを具体的に定めましょう。
返送料の負担
返品時にかかる返送料に関しても、返品ポリシーに明示しましょう。送料を「消費者側」と「販売者側」のどちらが負担するのか、また金額に関しても規定します。
返送料の例として「返品時の送料は全額消費者負担」や「購入から14日以内の返品で送料無料」などが挙げられます。
「送料無料キャンペーン」などで購入した商品を返品する場合「返品後の合計金額がキャンペーンの条件を満たさない場合、返送料が追加で発生する」といったルールを定めているECサイトも存在します。
セール品の取り扱い
セール品や特売品の返品・交換の可否を明示しましょう。一般的にセール品・特売品の返品は認めないケースが多いため、可能とする場合は「可能な場合の条件」を規定すれば、消費者とのトラブルが回避できます。
返品に関する問い合わせの受付時間
返品に関する問い合わせ手段と共に「問い合わせに対応できる時間」を記載しましょう。たとえば「カスタマーサポートセンターの受付時間」や「夜間音声AIアシスタントの有無・受付時間」などです。
また、問い合わせへの対応に要する期間も明示しましょう。たとえば「5営業日以内」といった情報を記載することで、問い合わせ時の消費者の不安が軽減できます。
ECサイト運営で知っておきたい返品に関する法律
ECサイトを運営するにあたって「クーリング・オフ制度」や「法定返品権」といった返品に関連する法律の知識が必要です。トラブル防止のために、必ず把握しておきましょう。
クーリング・オフ制度
クーリング・オフ制度は、契約の申し込みや締結をした場合でも、一定期間内であれば「申し込みの撤回」や「解除」が可能な制度です。
ただし、ECサイトは「特定商取引法」の「通信販売」に該当します。通信販売にはクーリング・オフ制度を認める規定がないため、適用されません。
法定返品権
法定返品権は、特定商取引法において規定されています。「商品の受け渡しなどを行った日」から8日間が経過するまで、消費者が理由なく一方的に契約を解除できる権利です。ただし、販売者が特約を広告に表示した場合は「返品に応じない」といった対応も制度上は可能です。
しかしブランド毀損につながりますので、特約があるにせよ、基本的には返品に応じましょう。
日本におけるECの返品率
日本におけるECの返品率は、5~10%といわれています。ただし、商品や業界、ECサイトの規模によって返品率は変動します。
たとえばアパレル商品は、サイズやカラーの不一致が起きる可能性が高く、返品率が高くなる傾向があります。一方家電製品や家具などは、返品率が低いケースが多いです。
そのため、平均値を超えているからといって「自社ECが問題を抱えている」と捉えず、あくまでも目安として考えましょう。
参考:J-STAGE「ネット通販における顧客体験としての返品処理の円滑化」
返品率の計算方法
返品率は「返品数÷出荷数×100」の式で計算します。出荷数に関しては「実際に納品が完了した数量」と捉えます。
たとえば「注文数が200件」「キャンセルが20件」「返品数が10件」の場合は「10÷(200-20-8)×100=約5.8」となります。そのため、返品率は5.8%となります。
返品率を下げる方法
返品率を下げる方法は以下の4つです。
- 理解しやすい返品ポリシーにする
- 梱包を強化する
- カスタマーサービスの質を向上させる
- 商品ページの画像を充実させる
理解しやすい返品ポリシーにする
返品率を下げるには、消費者が理解しやすい返品ポリシーを規定しましょう。
2023年にRecustomer株式会社が実施した調査によると、ECサイト利用者のうち92.2%が「購入前に返品ポリシーを確認している」と答えました。また「返品ポリシーを見て購入をやめた経験がある」と答えたのは92.6%でした。
商品の購入前に「どのような条件を満たせば返品できるか」「返送料の負担が必要か」といった情報を消費者に把握してもらえれば、返品にまつわるリスクが低減できます。
消費者は「返品ポリシーに納得できなければ購入しない」といった選択も可能になるため、わかりやすい返品ポリシーにすることで返品率が下げられます。
なおECサイトの売上を上げるには、返品ポリシーに消費者の意見を反映させる視点も重要です。「返品された商品」や「返品理由」をもとに柔軟に改善すれば、利用者数増加が期待できます。
梱包を強化する
返品率を下げるには、梱包の強化により商品の破損を防ぐ方法が有効です。梱包に問題がある場合、適切なサイズの梱包材が使えていない可能性があります。
また商品の特性に応じて、梱包材の種類を選ぶ必要があります。具体的には、ガラス製品の場合は「クッション性の高い梱包材」書籍の場合は「耐水性のある梱包材」といった方法で、梱包材を選びます。
さらに、商品の種類によっては破損しやすいものがあります。たとえば「シャンプー容器」を梱包する場合、ノズル部分が破損しやすいため、十分な配慮が必要です。
ただし梱包を丁寧にするほど「資材費」や「ロジスティック内の作業費」などが高額になります。そのため、返品率とコストのバランスを考慮しながら梱包の強化を進めましょう。
カスタマーサービスの質を向上させる
カスタマーサービスの質の向上は、返品率の低下に貢献します。2023年にRecustomer株式会社が実施した調査によると、93.1%のECサイト利用者が「返品体験がよければ再度同じECサイトで買い物をしたい」と答えました。
また、よい返品体験の条件として「ECスタッフとのやりとり数の少なさ」と答えた方が35.3%でした。そのため、消費者は「丁寧で人間味のある対応」ではなく「少ないコミュニケーションでスピーディーな返品体験」を求めていることがわかります。
返品対応の効率化には「業務のマニュアル化」や「一部フローの自動化」が効果的です。スピードを意識しながら誠実に対応し「ロイヤリティの向上」や「リピート購入」につなげましょう。
商品ページの画像を充実させる
ECサイトでは商品を直接確認できないため、消費者は商品ページの画像をもとに購入の意思を固めます。そのため、商品ページの画像を充実させると返品が回避できます。
たとえばアパレル商品の場合、以下のポイントを意識して画像を用意しましょう。
- 商品の特徴が詳細までわかるか(材質・縫い目・裏地の有無など)
- サイズ感がわかるか(着用しているモデルの身長を記載するなど)
- 複数の角度から確認できるか(前後左右で確認できる画像など)
- 色味は実物に近いか
上記を意識した画像を掲載すれば「注文時のイメージ」と「直接目にした感想」のギャップが埋められます。また商品の画像だけでなく、コーディネート画像も掲載すればさらにイメージがつかみやすくなります。注文前に商品に対する理解を深めてもらうために、バリエーション豊かな画像を掲載して返品の可能性を減らしましょう。
ECサイト構築プラットフォーム「futureshop」では、商品画像を最大40枚表示できます。さらにスタッフDXサービス「STAFF START」と連携すれば、スタッフのコーディネート画像とアイテム情報のひも付けが簡単に行えます。
引用:futureshop「STAFF START(スタッフスタート)連携」
撮影からECサイトへの投稿まで完結できるため、日々の業務が効率化できるサービスです。
返品をCVR向上の施策として捉える方法も
返品対応を「CVR」や「ユーザービリティ」を向上させる施策として捉え、柔軟な返品ポリシーを設けるのも1つの方法です。
たとえば、アパレル・ファッションの場合「サイズ感を確認するために実際に着てみたい」といったニーズがあります。この場合「サイズが合わなかった場合に返品できるかどうか」は購買心理に大きく影響するため、返品時に「送料無料」にすることでCVRが向上します。
実際に返送料を無料にした事例では、あまり返品されずに「返品率が上がらなかった」というケースがあります。そのため「返送料無料」をはじめとした柔軟な返品ポリシーは、CVR・ユーザビリティ向上に貢献します。
まとめ
ECサイトにおいて消費者が返品する理由は多様です。しかし、理由に応じて対策すれば「返品率の低下」や「顧客満足度の向上」などにつながります。
本記事で紹介した返品対応の流れや理由ごとの対応方法を参考に、自社ECの返品対応業務を改善しましょう。