その理解で本当に大丈夫?CRMとMAの違いとEコマースにおける活用

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EC業界においてCRMやMAが注目される理由

国内におけるEC市場の拡大が続く一方で、ECサイト間の競争はますます激しさを増している状況となっている。またECサイトに集客するための広告出稿費用も年々高騰し、新規顧客の獲得も難しくなってきている。

さらには消費者においても、欲しい商品があれば、まずはSNSや口コミ情報などで商品の情報を収集し、欲しい商品が決まった後には、少しでも安いショップを求めネットショッピングモールで検索するということが当たり前のように行われており、価格引き下げへの圧力も高まる一方である。

そんな中、自社ECサイトをベースとしたCRMが今再び注目を集めている。競争が激化している今だからこそお客様とのつながりを強固にして、自社の本当のファンを増やしていくためのCRMと、その実現手段の一つとしてのMAが今再び注目されているのだ。

CRMとは何か?

そもそもCRMとは、どういったものなのかについて、ここで今一度おさらいしておきたい。

CRMとは Customer Relationship Management の略であり、日本語では「顧客関係管理」と訳される。

CRMの概念を一言で説明すると

顧客との関係性を強化することにより、顧客の生涯価値(LTV)を最大化するための手法

ということになる。

このCRMの概念については、前半部分と後半部分の2つに分けて考えると分かりやすい。

まず後半部分の「顧客の生涯価値(LTV)を最大化する」という部分は、CRMの目的にあたる。CRMでは、この「顧客の生涯価値(LTV)を最大化する」という目的を達成するために行うものである。

そして前半部分の「顧客との関係性を強化する」という部分は、CRMの目的を実現するための手段となる。「顧客との関係性を強化する」を分かりやすく言うと「お客様に自社の熱烈なファンになってもらう」と言い換えることができる。

つまり、CRMとは

顧客のLTVを最大化させるという目的を達成するために、顧客に自社の熱烈なファンになってもらう手法

ということになる。

またCRMの考え方を形作る重要な概念として「パレートの法則」がある。

パレートの法則とは、購入金額の高い順に顧客を並べると、一般的な企業においては上位20%の顧客が全体の80%の売上を構成する形になっているという法則である。

ここから導き出されるポイントとしては、まずは自社においての優良顧客と、それ以外の顧客をしっかりと区別して、優良顧客を優遇して対応していくということになる。
優良顧客を優遇することで、全体の80%の売上が維持できる形となるため、高い費用対効果を得ることができるからである。

CRMではこのパレートの法則の考え方がベースにあるため、基本方針として、既存の優良顧客を増やして徹底的に優遇していくということが求められることになる。

以上、ここまでCRMの概要について説明してきたが、CRMのポイントをまとめると以下になる。

  • CRMとは、顧客のLTVを最大化させるという目的を達成するために、顧客に自社の熱烈なファンになってもらう手法のこと
  • 顧客の価値は、短期的な観点ではなく、中長期的な観点(LTV)で測っていく
  • 優良顧客とそれ以外の顧客を区別した上で、優良顧客については徹底的に優遇していく
  • 短期的な刈り取りのための施策を目的とするものではない

MAとは何か?

一方、MAとは、どういったものなのか。

MAとはなにか

MAとは Marketing Automation の略であり、一言で説明すると

見込顧客(リード)の管理や育成(ナーチャリング)を目的としてマーケティング業務の効率化や効果の向上のために開発されたシステム

ということになる。

ポイントは「マーケティング業務の効率化や効果の向上のために開発されたシステム」という部分であり、顧客とのコミュニケーションを自動化できるという点が大きなメリットとなる。
一方でシステムの目的が「見込顧客(リード)の管理や育成(ナーチャリング)」がメインということになるため、そもそもの目的がCRMの目的とは異なっているという点に注意したい。

MAを使うと顧客の属性や行動に応じてコミュニケーションすることが簡単にできるようになる。
特にMAは顧客の行動を捉えることが非常に得意であるため、例えば、ある商品が気になってサイトの同じ商品ページを何度も閲覧している顧客に対して
「顧客が特定の商品ページを一定回数以上閲覧したタイミングで、顧客の購買を後押しするような割引クーポンのメールを自動的に送信する」といったような施策を簡単に実現することが可能となる。

CRMとMAの関係性

CRMとMAの関係性を一言で説明すると、MAはCRMを実現していくための手段のうちの一つということになる。

よく勘違いされやすいのが「MAを導入すればCRMが実現できる」と思われていることであるが、これは大きな間違いである。

ここでのポイントは、あくまで主体となるのはMAではなくCRMであることだ。
まずは自社のCRMとして、どういった施策を行っていくのかについて考えていく必要があり、それらの施策を実現するために、MAをどのように活用していくのかという順序で考えることが非常に重要になってくる。

さらに言うと、実はこのポイントが自社にあったMAシステムを導入する上でも重要な役割を果たすことになる。
まずは自社がやりたいCRM施策を整理して、それらを実現することができるMAシステムを選定するという進め方が、自社にあったMAシステムの正しい選定方法となる。ここまで説明すると、必ずしも高額なMAシステムを導入することが自社にとって最良の結果をもたらすとは限らないということを、ご理解いただけるのではないだろうか。

繰り返しとなるが、MAシステムを選ぶ上では、自社がやりたいCRMを実現できるのかどうか、というポイントでシステムの選定を進めていくべきである。

MA活用のポイント

CRMを実現するための手段としてMAの活用を検討する場合には、注意すべき点がある。
それは「すべての顧客とのコミュニケーションを自動化しようとしない」ということである。

MAの強みとして「顧客とのコミュニケーションを自動化することを得意としている」というところがあるため、CRMの施策を考える上でも、ついMAの自動化されたコミュニケーション施策をベースに考えてしまいがちになってしまうが、ここまで説明してきた通り、CRMは顧客とのコミュニケーションを自動化することではない。CRMの本質は、あくまで優良顧客を優遇することでファン化を行い、リピート購入を促進させていくものである。

優良顧客はいつも自分を特別扱いして欲しいと思っている。

そんな優良顧客に対して、MAの自動化されたコミュニケーションを行って、本当に喜んでもらえるのだろうか?という観点で優良顧客に対するコミュニケーション施策を考えていくことが、非常に重要になってくる。

CRMについては、必ずしもMAがないと実現できないということではないため、すべてのコミュニケーション施策をMAで実現しようとはせず、場合によってはオフラインによる丁寧なコミュニケーションで優良顧客を優遇していくような施策も視野に入れて検討するべきである。

MAは「Marketing Automation」というその名前の通り、マーケティング業務の自動化を行うものである。自動化の目指す先は、効率化だ。

顧客とのコミュニケーションを効率化することによって、自社が大切にしてきたブランドや、顧客に提供していた価値が損なわれることはないだろうかと自問してみることが、CRMを実現する手段としてMAを活用していく上では、重要なポイントになってくるであろう。

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2019-03-13