店舗アンケート結果にみるEC物流の実態。倉庫利用・物流外注化のメリットは?
- 2021.04.092022.11.22
昨今のコロナ禍に伴うECの受注数の伸びに伴い、今まで自社で商品を梱包・発送していた店舗様において、全体の人員リソースがひっ迫している様子をよく聞くようになりました。その解決策として店舗様において、物流の外注化の検討を開始し、当社に対しても相談するケースも出てきています。
そこで、2020年10月下旬にフューチャーショップの店舗様に対して、アンケートを実施。店舗様の物流の実態、外部委託状況、課題意識等様々な角度から店舗様の声を集めてみましたので、その結果の一部をご紹介します。なお、今回のアンケートは、比較対象の割付設定やランダムサンプリング等を適用した統計的手法によるアンケートではありませんので、あくまで参考値としてご覧ください。
回答時期:2020年10月下旬~11月上旬
有効回答数:92店舗
回答店舗の平均月商:4,099,717円(2020年11月単月)
回答店舗の平均受注数:364個(2020年11月単月)
目次
利用している宅配会社は?「ヤマト運輸を約6割が利用」
一般的に配送サービス品質が高いと言われているヤマト運輸が約6割と最も利用されている宅配会社で、次に佐川急便が約4割、日本郵便が約3割となっています。複数の宅配会社を利用している店舗様が多数いるため、合計すると100%を超えています。
宅配会社の複数利用状況は?「約4割が複数の宅配会社を利用」
宅配会社の複数利用状況に関して、今回のアンケート回答結果では、約4割の店舗様が宅配会社を複数利用していると回答しています。なお複数利用している店舗様の平均利用社数は約2.3社となっており、およそ2社を使い分けている店舗様が多いことがわかります。
複数の宅配会社を利用している理由としては、例えば日本郵便だと80サイズと120サイズの間の100サイズというサイズがあり、宅配会社によって160サイズ以上の取り扱い状況や沖縄への配送料金が大きく異なる場合など、配送先や梱包サイズによって、複数の宅配会社を使い分けることにより、コストダウンをはかる店舗様がいると推測されます。
また、ご購入のお客様によっては、特定の宅配会社のドライバーを懇意にしているケースもあり、複数の宅配会社を選択できる状態は、お客様サービスの向上にもつながる側面があり、こちらを意識して複数の宅配会社を利用しているという店舗様も存在するようです。
サイズ別の発送料金は?「60サイズで平均約650円」
配送料金(発着地同一エリアへの配送料金・税込)に関して、宅配会社各社は、一般的に企業向けに月間の発送個数に応じてディスカウントした個別の地域別・サイズ別の料金テーブル(タリフ)を用意しています。今回のアンケート回答店舗における平均発送料金と、宅配会社各社のホームページに掲載の料金(共に税込)を比較すると、総じて店舗様の発送料金の方が2~3割低くなっています。
ただ、今回のアンケートの回答店舗様は様々な規模の店舗様が混在し、実際の回答データを確認すると60サイズ/80サイズ共に300円台の金額で発送している店舗様も複数社あり、かなりのばらつきがあります。その要因となるのは、月間の発送個数であったり、宅配会社との契約の交渉状況であったり、発送の外部委託状況(倉庫を通じて提示された料金テーブル)によって、異なると考えられます。
発送の外部委託状況は?「外部に発送委託の店舗は約3割」
物流の外部委託状況に関して、今回のアンケートの回答の店舗様では約7割が発送を外部委託せずに自社より発送、約3割の店舗様が発送を外部委託していると回答しており、自社で発送している店舗様が多いことがわかります。こちらも実際のデータを見てみると月間の受注件数が1,000件を超える店舗様でも、自社より発送しているケースが複数存在し、単純に発送個数によって外部委託しているわけではないようです。
発送業務の外部委託・物流の外注化のメリットは?
発送業務の外部委託・物流の外注化は多くのメリットを店舗様にもたらします。多くの店舗様が回答していたメリットは以下の通りです。
- 発送作業の効率化
- 発送品質の向上
- 作業工数の削減
- 在庫場所の確保
その他にも物流の外注化には様々なメリットが存在します。
実際の店舗様の回答コメントを引用しつつ、それぞれについて解説させていただきます。
出荷量の増減による人材不足・過剰を社内で心配することがない。(健康食品)
物流の外注化によりセール等による一時的な出荷量の増加への対応や、閑散期における人員の作業割り当て等を考える必要が少なくなります。出荷量の変動が大きく、変動が多頻度で発生する業種や業態(例:モール出店店舗、特定季節・タイミングで大幅に需要が増減する業種)である場合は、売上の増加に伴い増加する出荷作業以外の業務(問い合わせ対応、プロモーション管理、発注業務等)に人員を集中できるため、外注化のメリットは大きいです。
物流に関わる概ねのコストが変動費になる(食品)
物流に係る人員が内製である場合、また倉庫を自前で持つ場合、物流費は人件費や家賃という形で簡単に増減できない固定費となります。もちろん物流を外注化しても月額固定の項目はありますが、全体に占める割合は少なく、状況に応じて比較的容易に変更できる可能性が高いのが一般的です。物流費部分が、ある程度売上に比例する変動費化が可能となると、EC事業としての損益状況が明示的になり、結果的に効率的な経営や意思決定がしやすい環境となります。
発送運賃が自社から送るより安価(出版)
自社からの発送時に、既に安価な発送料金を提示されている店舗様は除きますが、実際に複数の物流・倉庫会社に相見積もりを依頼すると、いままでの発送運賃に比べて安価な発送運賃を提示されて驚かれるケースがあります。その要因は、発送個数が少なかった時から増えた現在まで、宅配会社とあまり交渉を行わなかった店舗等様々なケースが考えられます。
そのような場合は、一度別の宅配会社に現在の発送個数を伝えた上で相談する、もしくは配送の外部委託を検討すると良いでしょう。
なお、自社から発送する場合でも、配送方面別に仕分けをしておく、集荷時間を早めるなど、店舗様に負担のない範囲で宅配会社にメリットのある状況を作り出すことにより料金交渉が可能になるケースもあります。
稼働日が増え顧客サービス向上(下着ナイトウェア)
物流の外注化は、コスト面や効率面から検討される方が多いですが、委託する倉庫によっては、土日祝日や長期連休期間中などの出荷対応が可能な場合があります。より早く届けることによって顧客サービス向上、他社との差別化が図れる場合があり、そのような視点から物流の外注化を行っている店舗様も存在しています。
発送業務の外部委託・物流の外注化のデメリットは?
物流の外注化は、必ずしもメリットばかりではありません。配送を外部委託することによって生じるデメリットも存在します。代表的なのは、商品が手元にないことにより、商品撮影、商品選定、商品問い合わせ対応等への影響があります。
これから外注を検討される方は各種デメリットを考慮しつつ、どの程度倉庫側と連携し対応可能か確認することをお勧めします。こちらも実際の店舗様の回答コメントを引用して解説させていただきます。
同梱物で柔軟な対応が難しい。(ワイン・ビール・洋酒)
チラシなどの販促同梱物、もしくはノベルティなど、販売向上のための販促手段として同梱物を検討するケースは多々あると思います。全ての商品に同梱するならば比較的オペレーションは簡単ですが、特定の商品や顧客など一定の条件下のみで同梱を行う場合、外注先の倉庫によってはうまく対応できないケースが出てきます。
同梱物の在庫数量管理をするのかしないのか?どのような形で出荷指示がデータとして反映されるのか?場合によってはノベルティにOP袋に入れる加工の必要があるケースなど、倉庫側は、現場でのオペレーションが無理なく行えるように業務設計をする必要があります。外注化を検討する際には、確認事項として同梱物に対してどのような対応が可能か?他社での対応例等、自店で想定されるオペレーションと合わせて事前に倉庫側に確認すると良いでしょう。
B品の確認が甘い(レディースアパレル)
自社製造の商品ではなく他社からの仕入れ商品の場合、入荷時検品が必要のため、検品業務を倉庫に委託するケースがあります。単なる数量検品であればどの倉庫でも対応していますが、品質検品(不良品=B品を判別)する場合は、どうしても人が介在するため検品品質のばらつきが生じます。結果B品を良品としてお客様に発送してしまい、クレームになるケースがあります。
また、検品内容によっては倉庫側で作業ができないケースもあり、提示される検品単価も倉庫によって大きく異なる費用項目となっています。品質検品を倉庫に委託する場合は、検品基準を含めてオペレーションをどのように行うのか?少なくとも自社で今まで行っていた検品に関してマニュアル化が必要で、マニュアル化できていない場合は、検品基準の策定から始める必要が出てきます。
年々コストが増加している。(健康食品)
全体的なコストメリットを感じて物流の外注化を行った店舗様でも、昨今の宅配料金の複数回の値上げから、コストの増加を感じている店舗様も多いのも事実です。
宅配市場の急速な成長に伴う業界構造的な人材不足に起因するコスト上昇がその主な理由ですが、物流業界の方からの業界の裏話的なお話によると、一度契約すると倉庫を乗り換えるのが難しい(スイッチングコストが高い)ことを見越して、最初は店舗に対して費用を低く提示して、年々上げていくことを実際に行う物流会社もあるようです。物流の外注化を検討する際には、そのようなケースがあることを念頭に、同業他社の評判等も調査しつつ、検討していくと良いと思います。
まとめ
今回は店舗様へのアンケートを元に、EC物流の実態や外部委託状況について解説させていただきました。店舗の売上規模拡大に伴い、配送の外部委託を検討する際には、ぜひ検討の参考にしてください。
また物流も含めてECの立ち上げ、リニューアルを検討されている店舗様は、当社までぜひご相談ください。
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