デジタルプラットフォームを規制する新法、ECモール出店者への影響とは?【EC関連法の解説】

ECコラム デジタルプラットフォーム規制EC事業者さまに影響する法律の動向について、一般社団法人ECネットワーク理事の沢田登志子さまに寄稿していただく本連載。第4回のテーマは、2021年5月に公布された「取引デジタルプラットフォームを利用する消費者の保護に関する法律(取引デジタルプラットフォーム消費者保護法)」です。法律の概要や、モール出店者への影響などについて解説していただきました。

本稿は株式会社TradeSafeのウェブサイトに掲載されたコラム「知っておきたいEC関連法 その4.取引デジタルプラットフォーム消費者保護法」を転載したものです。見出し、画像、外部サイトのURL表記はE-Commerce Magazine編集部が編集しています

知っておきたいEC関連法 取引デジタルプラットフォーム消費者保護法

こんにちは。ECネットワークです。今回は、2021年5月に公布された消費者庁所管の新法「取引デジタルプラットフォームを利用する消費者の保護に関する法律」(以下「取引デジタルプラットフォーム消費者保護法」)についてご紹介します。

I. 対象はB2Cモール

取引デジタルプラットフォーム消費者保護法の規制対象は「取引デジタルプラットフォーム提供者」です。「取引デジタルプラットフォーム」とは、「コンピュータ画面上で消費者が通信販売の申込みができる機能を、販売業者等に有償で提供するもの」を指しています。これだけ見るとカートやEC構築サービスなども対象になりそうですが、第2条第1項(定義)では、「販売者向けと消費者向けの両方の顔を持つプラットフォーム」という意味の限定が付されています。販売者のみに向けたサービスは、この法律の対象外と考えられます。

「販売業者等」という言葉からわかるように、基本的にはB2Cのモールが対象です。楽天市場、Amazonマーケットプレイス、Yahoo!ショッピングなどが代表ですが、規模は問わず、産地直送の生鮮品など特定分野に特化したものを含め、全てのECモールが対象とされています。

オークションやフリマはストア出店が対象です。C2Cは対象外なのですが、いわゆる「隠れB」(事業者であることを隠して個人として出品する者)が存在する場合は対象になり得るということで、C2Cのマーケットプレイスを運営する事業者は、やや判断に悩むことになりそうです。

「販売業者等」には、物販のECだけでなく、役務(サービス)の提供者も含まれます。スキルシェアのプラットフォームなども対象になるということです。

法の目的は消費者保護です。ECモールの出店者には特定商取引法で連絡先の表示義務が課されていますが、モール上に表示された住所が虚偽であったケースや、モール上で安全性に問題のある商品が販売されていることなどが検討のきっかけとなりました。 あくまでプラットフォームを対象とする法律であり、ネットショップへの直接の規制ではないので、特定商取引法や個人情報保護法に比べれば、影響は限定的と思われます。出店審査が厳しくなったり、出店後の監視が強化され、問題のある商品や広告に対するペナルティが重くなったり、といったリスクは多少高くなるかも知れませんが、法令や規約を遵守して適正な販売を行っていれば、もちろん何も心配することはないと思います。

Ⅱ. 3つの措置をとる努力義務

「販売業者等」には小規模な販売事業者等も含まれるため、規制自体は厳しいものではありません。プラットフォームに課される義務は、以下3点の「措置を講ずること」(第3条第1項)、そして、それら措置の「概要を開示すること」(同条第2項)です。いずれも努力義務で、罰則等はありません。

1.消費者が販売業者等と円滑に連絡できるようにする措置

販売業者等の連絡先の表示の徹底、連絡手段が機能していることの確認、消費者からの情報提供受付などが想定されています。

2.販売条件等の表示に関し消費者から苦情を受けた場合に調査等を実施

消費者からの苦情を受け付け、メーカーやブランドオーナー、関係省庁等に照会し、不適正な表示と判断される場合は、状況に応じて販売業者等に対し比例的な制裁(不適正な表示が発生した状況やその程度に応じ、改善要請や出店停止など段階的な措置)を行うことなどが想定されています。

3.販売業者等に対し、必要に応じて身元確認のための情報提供を求めること

販売業者等のアカウント登録時に、登記事項証明書など公的書類の提出を求めること、銀行口座名義との一致を確認することなどが想定されています。

これらの措置については、各プラットフォームがそれぞれ創意工夫して実施することが期待され、「こうでなければならない」というものはありません。同条第3項に基づき消費者庁が定める「指針」の中で、ベストプラクティスとして上記のような具体的な取組例が示される予定です。

概要の開示方法は、内閣府令に委ねられています。各プラットフォームのサービスサイトに記載する前提ですが、業界団体などのサイトで比較可能な形で開示されていれば、そこにリンクする形も認められます。

Ⅲ.消費者庁による出品停止の要請

第4条第1項は、「問題のありそうな商品」が出品されている場合に、消費者庁がプラットフォームに対し、その商品の出品削除等を要請できるという規定です。

商品の安全性や性能に関わる重要な事項について、著しく事実と異なる表示、または有利誤認や優良誤認に当たる表示があると、この規定の対象となります。各商品の表示についての責任は一義的には販売者等にあり、是正指示等は販売業者等に対して行われるのが基本ですが、特定商取引法に基づく表示が虚偽であるなど販売業者等の所在が明らかでないといった場合に、この規定が発動されます。

プラットフォームから販売業者等への連絡がつく状態であれば、実務上は、問答無用で削除するのではなく段階的な対応が行われると思います。ただ法律上は、プラットフォームが消費者庁の要請を受けて出品削除等の措置をとり、その結果、販売業者等に損害が発生したとしても、プラットフォームは賠償の責任を負わないと明記されています(同条第3項)。

Ⅳ.販売業者等の情報の開示請求

第5条第1項には、消費者の権利が定められています。プラットフォームに対し、一定の場合に、販売業者等に関する情報の開示を請求できるというものです。一定の場合とは、消費者が販売業者等に金銭的な債権を有している場合です。その債権を行使するために必要な場合に限られ、販売業者等の信用を毀損するためなど不正な目的の場合には認められません。

債権が少額な場合は除かれます。いくら以上とするか、販売業者等の名称や住所以外にどんな情報を開示するかなど、詳細は内閣府令に委ねられています。

B2Cの場合は基本的に連絡先の表示がされているので、消費者が債権行使に必要な情報が足りないということはあまり想定されないと思います。しかしC2Cプラットフォームを使い個人で販売している者については、どのような要件を満たせばB(販売業者等)に当たり、この法律の開示請求の対象となるか、という点も大きな論点です。これについては、別途、ガイドラインの策定が検討されています。

Ⅴ.官民協議会

第6条で、行政機関、プラットフォーム事業者の団体、消費者団体など関係機関による協議会を組織すると規定されています。法律の施行日は未定(2022年5月目処)ですが、2021年11月、消費者庁を事務局として「取引デジタルプラットフォーム官民協議会準備会」という会議体が設置され、既に3回、オンラインで会合が開催されました。内閣府令の案、法定指針の案、販売業者等の考え方などについて議論が行われています。協議会の配布資料は、下記消費者庁サイトで確認できます。

取引デジタルプラットフォーム官民協議会準備会

官民協議会での検討をベースとし、内閣府令案と法定指針案の意見募集が行われています。受付期限は2022年1月17日です。

取引デジタルプラットフォームを利用する消費者の利益の保護に関する法律施行令(案)等に関する意見募集について

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