LINEの法人向けアカウント統合によって変わるメッセージ配信

LINE株式会社は、今年6月に法人向けアカウントの統合をアナウンスしたが、12月3日より新プランの提供を開始すると発表。LINEのメッセージ配信を利用する企業においては、いよいよ新プランでの配信が開始されることになる。今回はこの法人向けアカウントの統合によって、LINEのメッセージ配信がどのように変わっていくのかについて考察してみたい。

LINEが法人向けアカウントを統合

LINE株式会社は、2018年6月28日に行われた「LINEカンファレンス2018」において、法人向けアカウントの統合を発表。来春より「LINE公式アカウント」と「LINE@」の統合が行われるとのアナウンスを行った。12月3日より、まずは「LINE公式アカウント」において新プランの提供が開始されるが、今後は来年夏頃に予定されているグランドオープンに向けて新プランの適用先が順次拡大されていく見通しとなっている。

メッセージ配信への影響

新プランにおける変更点として最大のポイントとなるのがメッセージ配信の価格変更だ。これまではプランによって通常の配信とMessaging APIを利用した配信の料金は異なっていたが、今回の新プランにおいては一斉配信、セグメント配信、API配信に関わらず料金は一律となる。今後は企業アカウントの友だちに対して一斉配信を行っても、Messaging APIを使用して1to1配信を行っても、配信にかかる費用はどちらも変わらないということになる。

特にこれまでLINE@を利用してきた企業においては、ターゲットリーチ数(配信する友だち数)が一定数以内であれば無制限でメッセージ配信できていたものが、新プラン(スタンダードプラン)においては45,000通以上(※友だち数ではなく「配信通数」であることに注意)は従量制課金へと変更になる。例えばこれまでLINE@のプロAPIプラン(月額3万円)を利用して10万通の配信を行っていた場合、新プランでは179,000円となってしまい、実質的には約6倍の値上げとなってしまう。これを見ても分かる通り、これまでLINE@を利用して頻繁に配信されていたクライアントにとって、新プランへの変更は大幅値上げとなってしまうこととなり、LINEを使ったメッセージ配信の戦略自体を見直さざるを得ないという企業も少なくないのではないかと思われる。

法人向けアカウント統合の背景

今回、LINE社が法人向けアカウント統合に踏み切った背景については、大きく2点あると考えられる。まず1点目は「法人向けアカウントの種類が多く、機能が重複していることもあり分かりづらい」という点だ。特に以前は公式アカウントかもしくはビジネスコネクトアカウント向けにしか公開されていなかったMessaging APIが、LINE@向けに公開されたことでLINE@においても1to1配信が可能となった。しかし現在に至るまで公式アカウントもしくはビジネスコネクトアカウントとLINE@の間には大きな価格差が残ったままとなっている。この点については、実際に私が担当していたお客様からも「公式アカウントとLINE@の違いがわからなくなってきている」との声があがっていた。

さらに2点目としてあげられるのが「メッセージ配信の価値低下への懸念」である。LINEのメッセージ配信については、特にLINE@を使って低価格で配信ができるようになったことで、企業都合の安易な一斉配信が増加し、それによりブロック率が向上してきたという背景がある。LINE社としても、現状価格のままメッセージ配信サービスを継続すると、メールと同様、ユーザーにとって価値のないコンテンツ配信が横行してしまい、ひいてはLINEのチャネル自体の価値が低下してしまうということを懸念したのではないだろうか。実際、今年の6月に行われた「LINEカンファレンス2018」において、LINE執行役員の葉村真樹氏は法人向けアカウント統合の発表の際、「ユーザーに届けるメッセージの価値を高める」さらには「企業はユーザーに適したコンテンツを提供することが可能になる」と説明している。この発言を裏返してみると「現在のメッセージ配信においては企業がユーザーに適したコンテンツを提供しておらず、ユーザーに届けるメッセージの価値が低下している」ということに他ならない。

以上のことから、LINE社としては今回の法人向けアカウント統合によりメッセージ配信の価格を見直し、メッセージ配信を利用する企業において1to1配信を促進させることでユーザーにとって必要な情報を届けられるよう促していき、ひいてはLINEにおけるメッセージ配信の価値を高めていきたいという思惑が見て取れる。

アカウント統合後のメッセージ配信の変化

それでは今回の法人向けアカウントの統合により、今後のLINEのメッセージ配信はどのように変わっていくだろうか。ここで考察してみたい。

まずメッセージ配信の価格が上がることにより、全体として配信総数が減少することは容易に想像がつく。これまでLINEのメッセージ配信を利用してきた企業においても、安易に一斉配信を行うことは避けざるを得なくなり、ターゲットとコンテンツをよく考えた上で配信することになるため、その結果、LINEでメッセージ配信されるコンテンツの品質は全体的に向上すると考えられる。さらにはユーザーに届くメッセージの数が減少し、コンテンツの品質も向上することから、ユーザーのメッセージ配信に対するアテンションも高まっていくと思われる。

これまでLINE@を利用して大量のメッセージ配信を行っていた企業においては、特に今回の価格変更の影響を大きく受けることになるため、メッセージ配信の活用方法も大きく変わっていくだろう。短期的に確実に刈り取りができるような施策での利用が中心となり、長期的な顧客との関係性構築に向けたブランディング目的のようなメッセージ配信は減少していくと考えられる。

一方、タイムライン配信の料金はアカウント統合後も無制限のまま据え置きとなるため、これまでメッセージ配信で行っていたマス広告的な配信については、タイムライン配信が主流になると思われる。しかし、タイムラインにおいてはメッセージが流れてしまうという特性上、残念ながらメッセージ配信のように高いリーチ率は見込めない。

それでは、これまで公式アカウントを契約していたような大企業においてのメッセージ配信はどうなるだろうか。こちらについては、おそらくアカウント統合後もマス広告的な一斉配信は継続するのではないだろうかと推測している。このような企業においては、LINEのように消費者との距離感が近いところでプライベートのコミュニケーションツールとして使われている貴重なチャネルにおいて、メッセージ配信の価値が向上することについては、むしろ歓迎されているのかもしれない。配信にかかる費用がこれまでよりも多少高くなったとしても、広告効果としての価値を考えると十分にペイできると考えるのではないだろうか。

メッセージ配信の活用に向けて

ここまで見てきた通り、今回の法人向けアカウント統合後には、メッセージ配信にかかる価格改定が行われ、その結果として、メッセージ配信の価値が向上すると考えられる。これを踏まえて、今後、LINEのメッセージ配信をどのように活用すれば効果を上げていくことができるだろうか。

一つは、これまで以上にLINEのメッセージ配信を使ってどういった目的を達成していきたいのかということを明確にしていくことがあげられる。これまでのように安易な一斉配信はできなくなってしまうが故に、メッセージ配信によって何を実現していきたいのかという点が強く求められることになる。LINEはあくまでデジタルマーケティングにおけるコミュニケーション手段の一つであり、法人向けアカウントの統合によって配信価値の向上したLINEをどのように使うのかは企業次第となる。価値の高まったメッセージ配信を使って、あえて一斉配信を行っていくこともまた一つの戦術であると言える。

さらにはデジタルマーケティングの基本に忠実にメッセージ配信を行っていくことも、今後はより一層重要になってくる。友だちになってくれたユーザー全員にお知らせをしていくためだけにメッセージ配信を行うということをLINE社としては許容しないということが、今回の法人向けアカウント統合の要諦である。これまで以上に、精度の高いターゲティングや一人ひとりにパーソナライズされたコンテンツ、さらにはコミュニケーションのタイミングなどを計りながら、メッセージ配信を行っていくことが求められるようになるだろう。

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ABOUTこの記事をかいた人

水岩 雄一

外資系CRMベンダーのセールスコンサルタントを経て、テーマパーク運営会社におけるCRMシステムの企画/導入のプロジェクトマネージャーを担当し、ユーザーの立場でCRMを推進。

その後、国産CRMベンダーにおいてプロダクト企画責任者やエバンジェリストなどを歴任。2018年7月よりフューチャーショップに入社。

現在はR&D推進室に所属し、EC市場のリサーチ、futureshopにおける新機能の企画、CRM並びにデジタルマーケティングに関するセミナー講師やブログの執筆など、幅広く活動を続けている。